絵本紹介 | コラム
強いきずなとめぐる命の物語 ことりをすきになった山
文化人類学者アリス・マクレーランの文章に、カールがあざやかな絵をつけた1冊。
あれはてた野原にぽつんとそびえる、岩だらけの山。草木が一本も生えていないので、獣も鳥も、虫も住んでいませんでした。長い間、山はそうしてひとり、空ばかりながめて暮らしてきました。
ある春の日のこと、どこからかジョイという名の小鳥がやってきました。はじめて生きているものに出会った山は、ジョイにお願いをします。
「ここに いてもらうわけには いかないかね」
けれども、水も食べものもないこの山に長くとどまることはできない、とジョイは首をふるのです。そのかわり、毎年、春にこの山へ立ちよること、そして、子孫に代々ジョイという名をつけて、この山の道を教えつぐことを約束します。
こうして1年に1度、山には楽しみができました。
ところが、しだいに山は、ジョイを見送ることがつらくてたまらなくなってきました。悲しみにたえかねて、山の岩はくだけ、山の奥底からは涙が流れだします。
つぎの春、その涙でできた川の近くにジョイが種を植えて──。
ひとりぼっちだった山にだいじな友だちができ、やがて草木が育って生命あふれる地になるまでの、長い長い年月を描いたうつくしいお話。
最後に、作者マクレーランの言葉を紹介します。
「永い年月がもたらす変化のすごさとか、ひとつの命に託された何かが時間をこえてうけつがれていくすばらしさに魅せられて、一人類学者としての夢を描いてみました。この本の中のジョイのように、この絵本も親から子へまたその子どもへと、いつまでも親しまれていくことを願っています。」