

王都の貧民街で暮らす少年ノアは、ある日、奇妙な依頼をうける。
<修道院から、ある本を持ちだしてほしい。>
依頼主の黒ずくめの男爵は、本と引きかえに、ノアが姉と慕う少女の行方を教える、という。
怪しみながらも、情報ほしさに依頼を受けたノアは、首尾よく修道院に忍びこむ。しかし、盗もうとしたその本は、選ばれし者だけが読むことのできる魔導書<サロモンの書>だった。
やがてノアは、囚われの王女や、人語を話すネズミと出会い、依頼主である謎の男爵の正体にせまっていく。
1冊の本をめぐり紡がれる長編ファンタジー。
「あなたも、いっしょにいらしてください。」
「おれも?」
トマスは、ノアの青い瞳を見つめた。
「あなたこそ、〈青の読み手〉にちがいない。
わたしたちは、ずっとあなたをお待ちしていたのです。」
(本文より)
東京都に生まれる。『ニコルの塔』でちゅうでん児童文学賞大賞、新美南吉児童文学賞を受賞。作品に『うしろの正面』『十三月城へ エゼル記』『パラレルワールド』など、翻訳に『ぼくはきみのミスター』『ネズミだって考える』など。
1982年東京都に生まれる。武蔵野美術大学卒業後、フリーのイラストレーターとして活躍。装画、挿絵を手がけた作品に『緑の模様画』『わたしのしゅうぜん横町』『雲じゃらしの時間』『アギーの祈り』『赤い髪のミウ』『アゲハが消えた日』などがある。
ヨーロッパを思わせる架空の国を舞台に、1冊の本を巡ってくりひろげられる本格ファンタジーです。
謎めいた男爵、成り上がりの王妃、囚われた王女に、人の言葉を話す白ネズミと、一癖も二癖もある登場人物たちが、物語を彩ります。
物語のおもしろさを堪能できる作品、是非お楽しみください。