『デフ・ヴォイス〜法廷の手話通訳士』(文春文庫)で話題をさらった丸山正樹氏、初めての児童書。「デフ・ヴォイス」シリーズとして、その後『慟哭は聴こえない』(東京創元社)など続篇を刊行中。本作は、そのスピンオフ版として書かれたもので、コーダ(ろう者の両親の家庭で育った聴者の子ども)である主人公の手話通訳士の再婚相手の子ども美和と、シリーズ2作目に登場する友だち英知の学校を舞台に繰り広げられる。「水まきジイサン」「図書館で消えたしおり」「猫事件」「耳の聞こえないおばあさん」などのストーリーが、ミステリーの要素も加わり、少しずつリンクしていく。美和は義父から習った手話が使える。発達障害や場面かん黙症という特性をもつ英知も、人前で話すことができないが手話を習得していて、二人の会話は手話である。オリジナリティあふれる物語。謎は解けるのか! 巻末に手話の説明付き。
<目次>
1 水まきジイサン
2 手話でおしゃべり
3 消えたしおり
4 事件が起きる
5 迷子のおばあさん
6 うわさ
7 この世に一つのもの
8 おじいさんは覚えていた
9 事件の真相
10 しおりの思い出
11 別れのとき
受賞歴:
「テフ・ヴォイス」から「わたしのいないテーブルで」とシリーズを読んできて、今回の本で再び小学生の美和と英知に再会できて幸せでした。ありがとうございました。子ども達のやわらかい感性、水まきジイサンと私の父の姿が重なって涙があふれてしまいました。父も家の前の通学路で小学生が通る姿に声をかけている姿がほのぼのするのよ!とヘルパーさんから聞いたことがあります。美和ちゃんと英知くんに再び会えることを待っています。(50代)