『からすのパンやさん』をはじめ、600作品以上の作品で知られる絵本作家・かこさとしさんが、5月2日にお亡くなりになりました。92歳でした。
戦後、かつて軍国少年を目指していた自らの無知を恥じ、「子どもさんのために」生きると決意したかこさとしさんは、会社で研究員として働くかたわら、近所の子どもたちを集めて行うセツルメント活動に参加。子どもたちに絵を描く楽しさを伝えたり、手作りの紙芝居の上演をなさったりしていました。
そのときの紙芝居から生まれた絵本が、『からすのパンやさん』『どろぼうがっこう』などの「かこさとしおはなしのほん」シリーズです。活動に参加している子どもたちの反応をみながら、試行錯誤してつくった紙芝居がもとになっているシリーズは、現在もなおロングセラーとして読みつがれています。2013年には、長年あたためてきたシリーズの続編を40年ぶりに刊行し、今の読者の子どもたちはもちろん、かつて子どもだったたくさんの大人たちにも大きな感動をあたえてくれました。
工学博士としての知識を生かし、知識絵本の分野も切りひらき、「光触媒」の発見者である藤嶋昭さんらとの共著である近著『太陽と光しょくばいものがたり』など、子どもたちにわかりやすく科学の世界を伝える作品も数多く手がけられてきました。
3月には小学校6年生時に描いた卒業文集を再録した『過去六年間を顧みて』を刊行したばかりでした。
自らの作品の源について、「すべて子どもさんが教えてくれた」といつもおっしゃっていたかこさん。未来の子どもたちのためにのこしてくれたたくさんの作品を、これからも私たちは大切に、届けていきたいと思います。
心よりご冥福をお祈りいたします。
かこさとし おはなしのほん スペシャルサイト
こちらにもかこさとしさんのインタビューを複数掲載しております。