取材日記

ペルーの取材日記第2弾!

2015/01/29

きょうのブログは、『ペルー』を担当された鈴木智子さんの取材日記2回目です(1回目はこちらへ!)。赤ちゃんの頃から知っていたウリーセス君を撮影しはじめた鈴木さん。ペルーのおもしろいところをさらに紹介していただきました!

 

「撮影だからさっぱりしてくる!」

ペルーの人はとても身だしなみを大切にすると思います。日本にくらべて経済的なレベルは一般的に低いと思いますが(経済の格差がはげしいので、ペルーの富裕層にはアメリカに別荘をもって、海外留学をするのががあたりまえの人びともいます)、洋服をたくさんもっていなくても、おでかけのときにはいちばんのおしゃれをします。高級な整髪剤が買えなくても、ちゃんと水で髪の毛をぴちっと整え、くつをみがいて家をでます。

そういった習慣があることを、わたしは取材前に確認するのを忘れていました。そして1日目の撮影を終え、2日目の午後にあいさつの電話をかけたときでした。

「いまからみんなで床屋さんにいくんだ!」と電話口のウリーセスにいわれました。

「わたしが到着するまでぜったいに待っていてね! 床屋シーンも撮るからね」と、わたしはウリーセスに言い、タクシーを走らせて追いつくことができました。

長い髪の毛のウリーセスを撮影しておいても、つぎの写真からぼうず頭に変わってしまったら、本のなかで不思議に見えてしまうことがあると、わたしは心配したのでした。ペルー人の感覚では、せっかく撮影してもらうのだから、きれいさっぱりしておかなくてはと気をきかせてくれたのです。身だしなみが重要なのはここにもあらわれていました。

結局、本では散髪風景を使いませんでしたが、子どもの床屋さんについていったのははじめてでした。日本のようにいすにすわって、ケープをかけて髪の毛を霧ふきでぬらしてから散髪です。ここまでは同じですが、大人同様に手厚いサービスで、シュボシュボと泡のブラシでえり足も石けんをつけてもらって専用カミソリでそぎます。

床屋さんでウリーセスは、はさみもバリカンも使って、最後はドライヤーで髪をかわかしてもらっていました。料金は7ソル。日本円で約210円です。5才の弟は幼児用のバイクに乗って髪を切ってもらいました。そして同じようなサービスを受けて、同じ料金です。ちなみにわたしも前髪と後ろをそろえるだけなので同じ料金で切ってもらえます。アマゾン地方にいくと、はさみは整髪用のはさみではなく、布を切る裁ちばさみで切られ、3ソルから5ソルぐらい(日本円で90円から150円くらい)。アマゾンでは、じぶんで切ればよかった……と後悔することが多いです。

バスで学校へ

ウリーセスはバス通学をしています。また市内のどこへいくにも「コンビ」とよばれるバスに乗っていきます。一回の運賃は年々上がる傾向にありますが、ここでは70センティモくらい。子どもは半額です(日本円で約21円。子どもは10円ほど)。

日本のように運賃の支払機がついていないので、「コブラドール」とよばれる運賃徴収係が、運転手のほかに必ずひとり乗っています。大人の場合もあるし、小学生くらいの子どもが働いていることもあります。そして、この徴収係はお客さんのよびこみや、バス停のアナウンスもします。

「○○○いきのバスだよ! はやく乗った、乗った!」と言いながら、バスを待つ人に大声でよびかけたり、「つぎは○○○バス停だよ。おりる人はいるか~?」とバス停につく直前にさけんで、出口にすすんできた人から料金を受けとったり、おつりをわたしたりします。

受けとり忘れることがないようにみんなの顔を覚えていて、きちんととりたてます。ものすごい記憶力です!

ウリーセスの学校は私服で通学

ウリーセスの学校は私服ですが、ペルーの町を歩くと、制服を着た人たちをよくみかけます。一般的に、小学校から中学高校は制服があります。白や水色のシンプルなシャツに紺色や黒っぽいスカートやズボンがほとんどです。スカートはひざ下で、昭和のころの日本の制服のようです。

ウリーセスの学校はスイスのNGOが支援している学校で、自由な校風です。それで、私服で学校へ通っているのです。また、公立校では先生のことを「プロフェソール(先生)」とよび、ウリーセスの学校では下の名前をよびすてします。ウリーセスの担任は「ディアナ先生」ではなく、愛情をこめて「ディアナ」と子どもたちからよばれています。


登下校中のお買いもの

日本の小学生では、通学や下校中に買い食いはしないでしょう。けれど、ペルーではよくあることです。ウリーセスの学校では毎日ひとり1ソル(約30円)がおこづかいとしてわたされます。ウリーセスは、学校の近くの道ばたでビニールシートをひろげておかしやカードを売っているおばちゃんのところで使います。今はホラーのキャラクターが描かれているカードを集めているので、毎朝それを買うのが楽しみです。ほかの子どもたちは、あめやスナック菓子を買うのに使っていました。

クスコに引っこしてきてから、ウリーセスがいちばん幸せだった日

ウリーセスは大の水遊び好き!クスコへ引っこしてくる前は、アマゾン地方に住んでいたウリーセス。アマゾンにいたころのウリーセスにとってのおふろは、なんと川でした。それもボカマヌー村に住んでいたときは、大蛇や3メートルのワニがすんでいる茶色いアマゾン川の支流に毎日とびこんで一日の汗を流していたのです。泳いで遊べるのでとても楽しい時間でした。

けれどクスコでくらすようになってから泳ぐ機会がなくなりました。いちばんの理由は川があっても水が冷たすぎること。アンデスの雪どけ水が流れこむ川はとてもきれいですが、冷たくて泳ぐ気にもなれません。それに標高3400mをこえるところでは、気温もそれほど高くなりません。

そんなとき、日本人と結婚した親せきのおじさんの家の「おふろ」に入ることになりました。ペルーではもともとおふろに入る習慣がないので、おふろがついている家はあまりありません。みなシャワーですませています。おじさんの家ではじめて日本風のおふろの入りかたを教えてもらいました。

①パンツもぬいで、はだかになる。
②おふろに入るまえに石けんで体を洗って流す。
③40度ほどの熱い湯ぶねにつかってあたたまる。

日本人にしてみればあたりまえですが、アマゾンでの川の入浴はパンツをはいたままでなければいけません。ウリーセスも弟のナタニエルも、家ではパンツをはいたまま石けんで体を洗い、シャワーを浴びます。

ウリーセスは家のなかにおふろがあるのをはじめて見ました。

体を洗っていざ湯ぶねにつかります。「あち~!!」39度くらいのおふろでも、その熱さにびっくりしたようです。ふだんペルーの人は37度くらいのぬるいシャワーを浴びるのです。日本人には冷たすぎますね。

水温に慣れたウリーセスは、せまい湯ぶねでも大満足!「こんなに気持ちがいい水に入ったのはうまれてはじめてだよ! きょうは人生でいちばん幸せな日だ」と言って、弟とおじさんの娘と3人でお湯にもぐって大笑いしてはしゃいでいました。

ウリーセスはおふろが大好きになってしまったようです。


ウリーセスとペルーのお話はつづきます!

(写真・文 鈴木智子)

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鈴木智子

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1969年東京生まれ。アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校地理学部卒業。大学卒業後は、中米コスタリカの小学校や南米ペルーの大学で語学教師を勤める。その後、ペルーのクスコを拠点に、先住民の文化や祭りを撮影し紹介する。著書に『アンデス、祭りめぐり』『アンデス奇祭紀行』『世界遺産の町クスコで暮らす』『アンデスの祭り』がある。アマゾンの森林保護活動や、自然や文化をテーマにしたテレビ番組のコーディネーターとしても、南米やアメリカで取材活動をする。

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