取材日記

15年間くらした国ペルーを紹介する

2015/01/14

今回の取材日記は、鈴木智子さんのペルー編です。『世界のともだち アメリカ』を撮影した鈴木さんは、今度は長年くらしたペルーを撮影しました。さて、主人公のウリーセスはどんな子なのでしょう?

 

わたしがはじめてウリーセスと会ったのは、たぶんアマゾンで、ウリーセスが赤ちゃんのときだったと思います。しっかりと記憶に残っているのは、ウリーセスが2才くらいのときのことです。

その頃わたしは、アンデスの祭りの取材や、マヌー国立公園のガイドをしながらクスコの町を拠点として暮らしていました。スペイン風のパティオがある古いアパートがわたしの住まいでした(アパートの柱には1780年と記されていて、歴史を感じさせる建物でした)。

アパートの1階にわたしの部屋があり、近くにアンドレス夫妻(ウリーセスの両親)が引っ越してきました。ウリーセスはとてもやんちゃで、まだよちよち歩きなのに、若くてかわいいお嬢さんたちが家に訪ねてくると、もうニコニコ!ごきげんでかけよっていく、女の子好きな子でした。「これはラテンの血かな?お父さんに似ているのかな?」と冗談を言ってわらったものです。

今回、10才くらいの主人公を選ぶとき、いい子を取材したいというのはもちろんでしたが、 わたしが15年間くらしてきたペルーを、どのように描き、日本のみなさんに知ってもらうかということもとても大きな課題でした。

ペルーというと多くの方が、「コンドルは飛んでいく」のような「ヒュルルー」という竹笛の優しくさびしい音色や、アンデス山脈のイメージ、または、赤い独特の民族衣装を着た、日焼けした先住民が道を歩いている光景を思いうかべるのではないでしょうか。

じつは、小学生のときに「ペルーへ行こう!」と決心をしたわたしも、そんなイメージをもっていました。

実際ペルーへきて、日本の4倍以上もある大きな国土に、3つのまったくちがう地域がそれぞれべつべつの国のように存在していることを知りました(もちろん、観光の柱はイメージ通りのアンデス山脈ですが)。

ペルーには砂漠のような海岸地方があり、人びとはとても陽気です。黒人が多い町もあります。そしてアンデス地方は寒暖がはげしく、きびしい気候で、それに負けないようにしっかり働く山岳民族がたくさんいます。ラテンの明るさよりも初対面の人には、少しはずかしがり屋で静かな人が多かったです。そして東側のアマゾン地方はなにもしたくなくなるほど暑く、人びとものんびり、開放的な感じです。悪くいえばだら~っとしていて、よくいえば、なにも心配ごとがないように幸せそうにゆっくりと生きているといった印象を受けました。もちろん個人差はありますし、人びとの移住も多いペルーなので一概にはいえませんが、3つのまったく異なった環境には、3つの異なった人びとの生活や文化があります。

1冊の本で、3つの地域をすべて伝えるのはとてもむずかしいのですが、アンデスとアマゾン地方を行き来してくらしているウリーセスの家族を追ってみれば、ペルーのいろいろな面が見られるのではないか、と思ったのです。

今回、2か月ほどかけた撮影には、日本でいっしょにくらすペルー人の夫と、3才の娘と3人で出発しました。夫のウォルターの家族に娘の面倒を見てもらいながらの撮影です。

8年ぶりに再会したウリーセスは、大きくなっていてびっくり。でも素直でかっこいい子に成長してくれていてよかったーと思いました。(ちなみにペルーの中小規模の町や村の子どもや青年たちはみな素直で、危なっかしくグレた子たちになぜか会ったことがありません。これはわたしにとって、ペルーの謎のひとつです)

ウリーセスは弟のナタニエルとよく遊んであげていました。親せきが集まるときも、幼い子どもの面倒をみるのはいつもウリーセス。海外の観光客を案内するネイチャーガイドとして活躍する親せきがたくさんいるウリーセスには、国際結婚をした親せきが何人もいて、いとこもドイツやアメリカ、日本など国際色豊かなルーツをもっています。

そんなウリーセスは、わたしの娘ともよく遊んでくれました。言葉が通じない子もいるのに、子どもたちの間でウリーセスお兄ちゃんは大人気!そして、ウリーセスはわたしの娘を見て、「お父さん、ぼくも日本人の妹がほしいから、お母さんにお願いして産んでもらって!」と言って、お父さんを困らせていました……。


ウリーセスとペルーの話は、つづきます!

(写真・文 鈴木智子)

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鈴木智子

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1969年東京生まれ。アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校地理学部卒業。大学卒業後は、中米コスタリカの小学校や南米ペルーの大学で語学教師を勤める。その後、ペルーのクスコを拠点に、先住民の文化や祭りを撮影し紹介する。著書に『アンデス、祭りめぐり』『アンデス奇祭紀行』『世界遺産の町クスコで暮らす』『アンデスの祭り』がある。アマゾンの森林保護活動や、自然や文化をテーマにしたテレビ番組のコーディネーターとしても、南米やアメリカで取材活動をする。

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