

放課後の学校へ、忘れ物をとりにいった康男と優樹。教室で竜退治の騎士と出会い、ふしぎな事件が起こった。心がまるくなる物語。
受賞歴:
★刊行時に寄せられたメッセージです
ぼくの物語づくりの基本というか基準というか、判断のラインは「おもしろい」ということなんですね。その「おもしろい」のなかに、「なるほど」という理屈とか、「こう思うんだよ」というメッセージとか、「こんな感じっていいね」という雰囲気とか、いろんなものが入りこんでるっていう……、いや、そのいろんなものが「おもしろい」をつくっているって言ったほうがいいかな。とにかく何かの「おもしろい」で物語は出発するわけです。
この『竜退治の騎士になる方法』ですけど、出発点ではとてもメッセージ性が強かったんです。
ぼくは小学校で図工の先生をしています。もう35年ほどになります。するとその、「こう思うんだよ」と言っておきたいことが湧きおこってくるんですね。たいしたことを言いたいわけじゃありません。ぽんと肩をたたいてあげたいくらいのことですが。
それでこの物語を書こうと思いました。
もちろん物語というものは、それ自身がイキモノですから、出発点がメッセージでも、書き終わってみれば別のものになっているというのはめずらしいことではありません。理屈できちんととらえていないことが心とか身体の奥にあって、それが物語の呼吸でひきだされ、ことばになってしまうこともありますし、書いているうちに出発点よりも興味をひかれるものにぶつかることだってありますからね。
まあ、作者としてはメッセージ性の強い作品になったように思っているわけです。
そうそう、登場人物に関西弁をしゃべらせたのは『ムンジャクンジュは毛虫じゃない』以来のことです。
ちょっと変わった味の作品になったんじゃないかな、と思っています。
岡田淳