世界中で翻訳されている絵本『はらぺこあおむし』(エリック・カール 作)の日本語版の訳者、もりひさしさん(本名・森久保仙太郎さん)が、11月9日にお亡くなりになりました。101歳でした。
もりさんはほかにも『パパ、お月さまとって!』など、多数のカール氏の絵本の翻訳を手がけられていますが、そのきっかけとなった『はらぺこあおむし』について、このように振り返られています。
1975年のある日、私は偕成社の編集部に呼ばれました。それまでも時折、社をたずねていましたが、このときは“The Very Hungry Caterpillar”の日本語版を出すので、その訳文を担当してほしい、とのことでした。
私はおことわりしました。語学者ではないからです。
しかし、担当の編集はいいました。––––直訳をさけ、原作を研究、理解したのち、創作絵本などで培われたことばのリズム、歯切れよさ、声に出して読むときの音ののひびきを生かして訳文をつくってほしい、と。
その熱意に説得され、私は作品にふさわしいことばをさがすことにしました。試作しては検討をくりかえし、少なからぬ日月をかけて練りあげたのです。
『はらぺこあおむし』40周年限定版付録 スペシャルブックレットより
多くの時間をかけた検討の末に生み出された、親しみやすいタイトル、リズミカルで語りかけるようなもりさんの名訳が、日本での『はらぺこあおむし』の人気を支えてくださっています。
心よりご冥福をお祈りいたします。