「私はただの左足、種もしかけもありません」少年の体から逃げ出した一本の左足の、へんてこでシュールな冒険物語。
1975年、北海道生まれ。独学で絵画を勉強したのち、絵本と物語を書きはじめる。『左足のポルカ』でデビュー。
1959年、新潟生まれ。1994年より銅版画をはじめる。おもな絵本に『やどかりだんちのなみでんしゃ』、さし絵作品に『左足のポルカ』がある。神奈川県鎌倉市在住。
とにかくへんてこな物語です。とつぜん少年の体から足が一本だけ飛び出し、口をあけてもらい、義足となり、南極へ向かう、という突拍子もない展開で、読者を飽きさせません。この手島さんの原稿は、偕成社へ持ち込みとして郵送されてきたものです。短い話ではないこともあり、はじめは読むのに気乗りがしませんでしたが、一読すると、展開の速さ、小気味よい文章、すぐれた情景描写などに、ぐいぐいと引きこまれ、あっという間に読了しました。そのとき手島さんへはすぐに連絡したのですが、お会いしてみると、やはり独特な雰囲気。存在感があるのかないのか、よくわからない、しかし文章へのつよい執着は感じる、という方で「こういう妙な魅力のある方だからこそ、こんなヘンな話を書くのだな」と納得した記憶があります。
手島さんは、どんどこ作品を書き続けているので、今回の作品が注目され、これからさらに面白い物語を書く作家さんとなっていくことを願っています。