

1942年、東京。町の表通りに若い靴屋さんが越してきた。ひょろ長い体にぶあつい眼鏡をかけた靴屋のタスケさんは、いつも背中を丸めて古い靴を直している。「今は材料の革がないし、靴をあつらえるなんて贅沢は許されないしなあ。でも、こう見えても、腕はたしかなんだぞ」。小学一年生のわたしは放課後になると靴屋さんに行って、タスケさんの仕事を見るのが楽しみになった。わたしは、タスケさんのことが大好きだった。しかしまもなく戦争が激化し、タスケさんはお店を閉めて兵隊さんになるために田舎へ帰っていった。やがて、わたしはタスケさんのことを忘れていったーー。『魔女の宅急便』の作者・角野栄子が若い世代へ贈る、戦争のものがたり。
受賞歴:
タスケさんはふるい靴を、心をこめて直し、そんなタスケさんの心を好きになった私。そんな小さなしあわせもなくしてしまう戦争。日本が変わってきている今、子供達に読んでほしいと思います。(59歳)
お話とイラスト、とても素晴らしかったです。過去に戦争があったこと……忘れてはいけません。大変な時期にちょっとだけタスケさんに作っていただいた赤い靴、心がほんわりしました。イラストは本の中にすいこまれるほど、インパクトがあり、感動しました。大人も読める児童書です。本はかけがえのない宝物だと思います。ありがとうございました。(50代)