町の中にある大きな丸いタンクを見かけたことはありませんか? これは、そんな丸いタンクを持つ工場のおはなしです。工場で働いているのは、町に暮らすねこたち。ねこたちは町の中を走り回って材料を集め、それを工場であれこれ加工して、町を吹き渡る風を作っているのでした。材料や作り方によって、あたたかかったり、つめたかったり、いいにおいがしたり、体が飛びそうだったり、いろいろな風を作ることができます。不思議な材料をみつけたねこ、どこかあやしい新入社員などが登場、思いがけないことが起こる工場の毎日をえがいた三話を収録。
1975年埼玉県生まれ。 2006年、第18回新美南吉童話賞最優秀賞受賞。2007年、第29回子どもたちに聞かせたい創作童話大賞受賞。こぎん刺し作家としての共著に『ちいさなこぎん刺し』(河出書房新社)などがある。『ねこの風つくり工場』が創作のデビュー作。
1971年、愛知県に生まれる。東京外国語大学イタリア語学科卒業。2006年、ボローニャ国際原画展入選。立体・平面作品の制作、発表をするかたわら、絵本、さし絵の分野で活躍。
作者の水野さんは、こぎん刺しという青森の伝統的な刺し子小物をつくる小物作家で、創作の本はこれがデビュー作です。ちょっと違う分野のようでもありますが、この物語もまさに、一針一針、ちくちくと刺していくようなていねいな歩みでつむがれたものです。さいしょに、このお話素敵だな、とおもう短編をいただいたのは8年ほど前。そこから、工場の様子、風を作る時の工程などじっくりじっくりつめていって一冊になりました。作りこまれた世界に広がるさわやかなお話三つです。