名前がないので、誰でもない。誰でもないから、何にでもなれる。それが、こんとん。六本の足を持ち、六枚の翼を持つけれど、目も耳も鼻も口もなく、いつも空を見あげて笑っている、こんとん。
そんな、こんとんのところに、ある日、南の海の帝と北の海の帝がやってきた。
帝たちは、こんとんに、二つの目、二つの耳、二つの鼻の穴、そして口、あわせて七つの穴を作ってやることにしたのだが──。
中国神話に登場する「渾沌」の伝説をもとに、夢枕獏が語るせつない物語。
その「ものいわぬもの」のイメージを松本大洋が愛しさをこめて描いた美しい絵本。
こんとんのからだがばーんってなるところがいちばんすきです。そこがおもしろかったです。こんとんってなあにっておもいました。さいごがうれしいね。だいすきっていってもらってこんとんうれしいね。こんとん目と耳と口をもらってつかれてふーってなってたよ。こんとん、なんで前に行けないのかな。(3歳・お母さまより)
“こんとん”のような父(75)を介護していました。事故にあうまで山奥で一人、木を伐って暮らしていた父の言葉は、まさに、帯にあるよう「なんにでもなれる」言葉でした。障害が残り、口グセが「わからない」になり、私としては、自分の内側を正直に話せるようになったのだと感じました。(30代)
何度でも何度でも読み返したくなる、大切な大切な本になりそうです。冬という季節にもぴったりで娘と一緒にいろんなイメージをふくらませながら楽しんでいます。(4歳・お母さまより)
日々の暮らしの中で、気になることがあったり、よくない出来事に遭遇したり……そんなときに早く、なんとか片付けたいと、どこかで思っているような気がするのですが、そんなに急ぐ必要はないんじゃないか!?と思いました。ありがとうございました。(読者の方より)
「陰陽師」シリーズでは読後いつも静かでおだやかな時が流れるのですが、「こんとん」はさらにもの悲しさそれでいて不思議なあたたかさが加わって素敵な本でした。私の憧れの生き方の「雨にも負けず」の皆にでくのぼうとよばれいつも静かに笑っている……に共通するものがあります。世の中のいやなことを見ることも聞くこともしないで良いのは幸せです。(50代)
夢枕獏先生、松本大洋先生の両者とものファンのため、購入しました。渾沌の故事にちなむ目鼻への考え、そして“きみのことが好きだよ”というシンプルなメッセージに考えさせられました。良い本ですねー。(読者の方より)
中国の神話の中に出てくる“こんとん”を読んだとき、その神話を本でみたくなっていたところ、朝日新聞の本の紹介にあって早速購入しました。架空・想像のこんとんだけれども、いつも空を見上げて笑っているこんとん…切ない気持ちになりました。めまぐるしい現在、いらないもの、不必要なものをいっぱい身につけている私かもしれないと考えさせられました。絵本から学びました。(70代)
読んでみて、最初、しょうがいをもった人をイメージしました。でも、もう一度読んでみると、そういうわけでもないと思えてきました。人というのは、言葉で表しきれるものではない。他人から見て「こうあればいいのに」という思いで無理強いすることはできない。浪人中の息子に対し、思うことが多く、心乱れるこの頃、もっと心を落ち着け、息子のありのまま見なければと反省しました。(50代)
本屋さんで何気なく手に取り、カミナリに打たれたようにその場から動けなくなりました。うまく言葉にできませんが、心の奥の奥までシュ〜っと入りこんでくるような静かな、でも確かなパワーのある本でした。絵本で、ふるえるほど、心が動かされたのは初めてです。すばらしい本をありがとうございました。(30代)
とてもおもしろかったです。文章にリズム感があり、楽しく読めます。絵もとてもすてきでした。(12歳・男の子)
小学校へ絵本の読みがたりにいって、16年になります。『こんとん』は高学年用にします。自分の目で見る、聞く、かぐ、自分の口で語る、とても大切なことを近頃は軽く見すぎていますね。おもしろかったり、子どもうけする本が多い中、自分で考えることに気づいて欲しい。この本にひかれました。こんとんきみのことがすきだよで終わっているところも好きです。(読者の方より)
書店で偶然見つけました。不思議な雰囲気がとても味わい深いです。仕事で理屈にがんじがらめになった心がほぐされとても心地良いです。(40代)