

空まで届くふしぎな家を、のぼって探検しよう! 縦にながい画面が大迫力、いろいろな生きものに会いながら頂上をめざします。
1962年愛知県生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中に第17回現代日本美術展大賞を最年少で受賞。国内外の多くの美術展に、観客が参加できるインタラクティブな作品を発表し、注目を集める。テレビ番組『ウゴウゴルーガ』、三鷹の森ジブリ美術館『トトロぴょんぴょん』『上昇海流』、音と光を奏でる楽器 『TENORI-ON』などを手がけ、現在は書籍やブログを通して親子の創造的な関係を精力的に発信している。おもな著書に『いわいさんちへようこそ!』『いわいさんのどっちが?絵本』『光のえんぴつ、時間のねんど』『100かいだてのいえ』『ちか100かいだてのいえ』などがある。
★刊行時に寄せられたメッセージです
この『100かいだてのいえ』は僕にとって、初めての本格的な描き下ろし絵本です。約2年前、僕が娘のロカちゃんとの手作り遊びを紹介した『いわいさんちへようこそ!』という本を出したとき、それを見た偕成社編集部の方から、絵本を描いてみませんか? とお話をいただきました。
その頃、ロカちゃんは小学1年生になって算数を習い始めたのですが、数字の桁上がりがなかなか理解できないでいました。それを見ていて、本の構造を使って、数字のことがわかる絵本を作ってみたらどうだろう、と思いました。本の見開きに10個の何かが描かれていて、それが10見開きで合計100になる。それも、ただ何かが並んでいるよりも、ひとつひとつが積み重なって大きな数字になるものがいいのでは、と建物をモチーフにするのを思いつきました。
そこで、まず20階分の簡単な家の絵を描いてみました。するとロカちゃんは「ねえパパ、これでお話しして!」と、とても喜んだのです。遊ぶうちに、登場人物が100階をめざして登る設定や、高さを表現するために、本を縦長の見開きで使うアイデアなどを思いつきました。うまくいけば、見たことのないタイプの絵本になりそうです。
さて、そこまではよかったのですが、いざ具体的に始めてみると、ストーリー作りや、100階分の部屋のヴァリエーションを考えるのが大変で、とても時間がかかってしまいました。ただ途中から、僕自身が行きたい場所や住みたい部屋をイメージすればいいんだ、と気がつき、それからは楽しみながら絵を描くことができました。最終的には、当初考えていたような教育的な絵本ではなくなりましたが、純粋に画面の面白さ、絵のディテールを子どもたちが楽しんでいるうちに、なんとなく頭の中に数字の概念が入ってくれるのではないかと思っています。
まずは、主人公トチくんの視点に立って、次にどんな部屋、どんな生き物に出会えるか、ドキドキしながらてっぺんの100階をめざしてみてください。(岩井俊雄)