テレビを初めて見たもぐらくんと森の仲間たち。この魔法の箱にすっかり夢中になりすぎたみんなを、もぐらくんが助ける。チェコのお話。
★刊行時に寄せられたメッセージです
もぐらくんが、うさぎくんやねずみくんたちと暮らす平和な森に、ある日かたつむりくんが、変わった箱を持ち込んだことで、森の暮らしはすっかり変わってしまいました。
その箱とは、もぐらくんが初めて見る”テレビ”というものだったのです。テレビにスイッチを入れたかたつむりくんのそばで、もぐらくんは目を丸くしました。テレビという箱の中では、本物そっくりの鳥や魚が競争したり歌ったりしています。まるで、魔法のようでした。
やがて森の仲間もテレビのまわりに集まってくると、面白くて離れられなくなります。夜になっても、誰も帰ろうとしません。朝まで眠らずにテレビを見て、暑い日も雨が降る日も、もぐらくんが遊びに誘っても、みんなはテレビに夢中です。
「さむくなれば、みんなのきもちも、きっとかわるよね。」
もぐらくんは思いましたが、みんなはテレビの前から全く動こうとしませんでした。
再び春が来てもぐらくんが目を覚ますと、仲間がいばらの枝に、がんじがらめになっていました! すぐに仲間を助け出したもぐらくん。そして、全員にあるものをプレゼントしてくれました!
春には散歩に出てたんぽぽを数え、夏には池で水遊び。秋のきのこ狩りを楽しんだりスキーをしたり。もぐらくんの1年は、自然を身近に感じるチェコ人の暮らしを彷彿とさせます。もっと体と心で季節を感じましょう、というメッセージが伝わってきます。ミレルさんが丹念に描いた草花や森の絵もきれいですが、動物たちがいばらにからまれた場面にも思わずくくっと笑ってしまいます。予想のつかないユーモアたっぷりのストーリー展開で、最後まで一気に読ませてくれます。
ぜひごらんください! (木村有子)