キツネがつれてきたキュートなともだちヤマネ。オオカミは気になって、しかたありません。ともだちだから、気になるのかな?
1961年東京生まれ。スロヴァキア共和国のブラチスラヴァ美術大学で石版画を学ぶ。和洋両方の味を合わせ持った独特の画風。主な作品に『めっきら もっきらどおんどん』『きょだいなきょだいな』『おっきょちゃんとかっぱ』『まゆとりゅう』『いそっぷのおはなし』、「おれたち、ともだち!」シリーズなど多数。
★刊行時に寄せられたメッセージです
さりげなくだったのか、意図的だったのか。編集者のKさんが「ヤマネ、もったいないですよねえ」と、おっしゃった。
ヤマネは、このシリーズの『あいつもともだち』と『ともだちおまじない』に、脇役ともいえないチョイ役で出ている。
「そうですねえ」
うなずきながら、わたしはその謎掛けの意図を理解できず、脳味噌をしきりにゆらした。『ともだちおまじない』も、Kさんのさりげないような、そうでないような、一言から始まっている。
「内田さん、つぎは川柳で書いてください」
「だめです」
川柳を書いたことがないわたしは即座にお断りした。それがどうなって、ああなって、こうなったのか……。気がつけば『ともだちおまじない』は世に出ていた。不思議である。
ヤマネ、ヤマネ、ヤマネ……。
わたしはヤマネの名前を何度もくり返した。オオカミが浮かんできた。そういえばオオカミはヤマネに……だったような気もする。
でも、気もするだけでは、物語は書き出せない。背中をポンと押してくれる、なにかが足りないのだ。ユーモアでしょうか。
それで、わたしはさらにくり返した。
ヤマネ、ヤマネ、ヤマネ……。
するとどうだろう。
ヤマネ、ヤマネ、ヤマネ……が、ヤマネ、ヤマネ、ヤマネ、やまねえ、になった。
雨が「やまねえ」。
それが、かくもすてきな絵本になったのは、ひとえに降矢ななさんの魔術である。
そういえば、わたしはKさんの魔術にかかっていたのだろうか。いや、きっとそうにちがいない。昨日も、Kさんは「降矢さんはタヌキがお好きなようですよ」と、さりげなくささやかれた。
運命は、さりげない出会いに隠れているようである。(内田麟太郎)
お月見の時期とバレンタインの時期に、小学校で読み聞かせに使わせていただいています?(読者の方より)