こぐまがみているのはモモンガ? スカンク? 見開きいっぱいに登場する動物の絵を指さしながら、親子の会話がはずむ絵本です。
1916年アメリカのカンザス生まれ。カンザス州立教員養成大学卒業、ノースウェスタン大学哲学科博士号取得。高校教師・小学校校長・大学の客員教授などを経たのち、読書指導をする教員や図書館員の育成に尽力する。絵本作家・詩人としても活躍し、数々のベストセラーを生み出した。おもな作品に“Chicka Chicka Boom Boom”など。2004年逝去。
★刊行時に寄せられたメッセージです
最初のページのこぐまくんは、なんだか少し心配そうな顔をしていますね。迷子になったのかな。「かあさーん、どこにいるの?」と、こぐまくんが木に登ってかあさんをさがしていると、おや、アカギツネがそろーりと通りました。こぐまくんがアカギツネのあとをそーっとついていくと、わあー、モモンガが木から木へ飛びうつっています。こぐまくんがモモンガのあとをついていくと……。
最後のページのこぐまくんの顔を見てください。かあさんぐまに会えて、ほっとした笑顔ですね。そのまえのページのかあさんぐまは「おやおや、ここにいたのかい。」と、やはり安心しています。
この絵本に登場するのは北米の野生動物なので、日本ではなじみが薄いかもしれません。動物園でも見ることができないときは、図書館の動物写真図鑑などで探してみてください。ひとつ補足ですが、絵本のなかの「シカ」は、ラバのような大きな耳をもつ「ミュールジカ」をさします。
ビル・マーチンさんの原文は韻を踏んでいて、読んでみるととてもリズミカルです。そのため子どもたちにとって、聞きやすく、読みやすく、覚えやすいのでしょう。『くまさん くまさん なにみてるの?』に始まり、『しろくまくん なにがきこえる?』『パンダくん パンダくん なにみているの?』と続いてきた、くまさんシリーズの絵本が、英語圏の子どもたちの言葉の勉強にとても役立ってきたといわれるのも、なるほどと思われます。今回もわたしは、そのリズムを大切にして、子どもたちが読みやすいように訳しました。
エリック・カールさんの絵本を読みきかせするとき、わたしは子どもたちの集中力にいつも感心します。カールさんの絵(コラージュ)には、子どもたちの心をぎゅっととらえる不思議な力があるように思えてなりません。それはきっと、カールさん自身のやさしさや純真さが子どもたちに伝わるからなのでしょうね。
どうぞ、カールさんの新しい絵本を存分にお楽しみください。(おおつき みずえ)