
3巻目の『ブラジル』で陽気な笑顔を見せてくれていたミゲル。カメラマンの永武さんが3月にリオデジャネイロを再訪しました。「世界のともだち」の取材から2年、すっかりお兄さんになっていたようです! 動画もいっしょにご紹介します。動くミゲル、新鮮です…!
リオで「カリオカ」のミゲルと再会した。「オラー(やあ!)」。今年3月、マンションを訪ねると、ぐんと身長がのびたミゲルが顔を出した。チャーミングな笑顔はそのままに、声は1オクターブくらい低くなっている。
初めて出会った2012年、ミゲルはまだ小学5年生だった。いまでは13才の中学2年生。背丈もわたしより大きい。お母さんがメジャーを取り出してミゲルを計ってみると165センチある。前は少し恥ずかしがりやだったけれど、今回はしっかりと目をあわせて挨拶。好青年の度合いがアップした。
思わず、もう特別な人(彼女)はいるの? と聞いてみる。「ううん、まだいないよ」とミゲル。「わたしもまだいないのよ!」とお母さんが合いの手を入れて笑った。
2年前、ミゲルはパソコンのゲーム、街作りをするマインクラフトに夢中だった。いまはゲームも、もっぱらプレイステーション。それから、将来の夢もミュージシャンに変わった。「えっ? 前は俳優になりたいって言っていたじゃない?」「だって、なんだかはずかしいよ」受け答えもしっかりしてきていているのに、ちょっと意外な答えだ。
「それで、どんな音楽が好きなの? 」「サンバ、パゴージ(サンバのジャンル)、ファンク以外はなんでも」ブラジルの伝統的な部類の音楽には、今はあまり興味はなさそうだ。好きなバンドはたくさんある。そのひとつはイギリスのArctic Monkeys。
ミゲルはいま、ギターを習っている。ちょっとだけ披露してくれた。「えっと、何を弾こうかな……」ポロン、ポロン、とつま弾いてくれたのは、レッド・ツェッペリンの名曲「天国の階段 (stairway to heaven)」。途中、ちょっと間違えると、「やっちゃった」と、片目をつぶった。
ギターのほかに、英語も習っていて、スイミング教室にも通っているという。それでも、毎日、一番時間を費やしているようなのは、実はスマホのようだ。一日にどのくらい、使っているの? という質問には、はぐらかして答えなかったけれど、どうやら、起きている時はほとんど手ばなせないらしい。友だちといつも、「whats app」というアプリでコミュニケーションしている。
家を訪ねた日は日曜日。仕事がオフのお母さんも、高校生になったお姉さんのクララも、くつろぎの一日。だけれど、この日は掃除のお手伝いさんが来ていて家中を片付けていた。そこでベランダに出てみると、ゴソゴソと動く物体を発見。カメの「タッタ」だった(ポルトガル語でカメはタッタルーガという)。以前よりひとまわり大きくなっている。成長したのはミゲルだけでなかったのだ。
別の日に、ミゲルとお母さんと街の公園で待ち合わせた。小学生のころは、外に出る時には、お母さんとかお父さんとか、大人が一緒だった。いまではミゲルも一人で地下鉄に乗る。この日は、これからヘアーカットに行くのだそうだ。伸びた髪の毛がカールして、額にかかっている。
「ブラジルはいま、経済がきびしいの。物価も上がって生活は楽ではないのよ」。働きながら子育てをしているお母さんの声が上がる。リオでは近ごろ電気代も5割も値上げだとか。ミゲルが通っている私立学校の負担も大きい。2年後、高校生になる時には、進路を考えながら学校を変えるかもしれないそうだ。
お母さんとミゲルのツーショットをスナップ。ふたりが並ぶと同じくらいの背の高さで、ミゲルも、すっかりお兄さんに見える。たった1年半くらいで、ミゲル、ずいぶん大きくなったなあ。それでも、話をしてみると、純真な少年が表に出てくる。家族に大切にされて健やかに育っている姿がうれしかった。次に会う時には、どんな夢を語ってくれるのかな、カリオカっ子、ミゲルの未来が楽しみだ。
(写真・文 永武ひかる)
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