

絵本作家の田畑精一(たばたせいいち)さんが、2020年6月7日に、89歳でお亡くなりになりました。
偕成社では1985年に、田畑精一さんを画家にむかえ、片手に先天性四肢障害をもった女の子を主人公にした『さっちゃんのまほうのて』(たばたせいいち、のべあきこ、しざわさよこ、先天性四肢障害児父母の会 共同制作)を刊行しました。
ごっこあそびで「お母さんになりたい」と言ったさっちゃんは、まわりの子が「指のないお母さんなんて変だ」というのをきいて、初めて自分が他の子と違うことを認識し、ふさぎ込みますが、お母さんやお父さんから愛情に満ちた声をかけられたり、新しい命にふれたりしたことで、元気を取り戻していく物語です。
刊行以来、長く愛されているロングセラー絵本で、2020年5月現在、69万部を突破している作品です。
本書には「さっちゃんのまほうのて しおり」が挟み込まれていますが、そこから田畑さんの言葉を掲載いたします。
さっちゃんへ––––えかきのおじさんより
さっちゃんのえほん、やっとできたよ。
さっちゃんのおかあさんたちと えほんつくりはじめたのは もう5ねんもまえだよね。とってもむずかしかったから、おじさんはとちゅうで なんどもふうふういったんだ。でもそのたびに ふぼのかいのスキーキャンプや なつのそうかいにでかけて、おおぜいのさっちゃんや さっちゃんのおとうさんおかあさんに はげまされたり おしえられたりして とうとうかきおえたよ。さっちゃんのことだいすきになって いっしょうけんめい かいたんだよ。
しゅっぱんしゃや いんさつじょのかたたちが、すごくいいほんにしてくれたから、いまはみんながよんでくれるのを どきどきしながらまっている。
さっちゃんが よろこんでくれるといいな! にほんじゅうのこどもたちが、さっちゃんのこと すきになってくれると もっといいな!(たばたせいいち)
これからも多くの方にさっちゃんを知ってもらえるよう、絵本を届けたいと思います。
心よりご冥福をお祈りいたします。