時は宋の時代。外見は人間だが、人以外の生物.封魔に生まれかわったものの、白鶴観で道士として働くことを許された少年李斗。李斗は、生まれ故郷の泉州から少女の道士花蘭と共に福州に派遣される。福州で脳みそを抜き取られた死体が見つかり、「封魔」がらみかもしれないので調べることになったのだ。李斗はあやしい人物と疑われている女占星術師・碧紫仙子と出会い、その可憐さに夢中になってしまう。はたして碧紫仙子はこの事件に関係しているのか?
南宋時代の中国を舞台に、少年李斗が一度なくした自分をみつける物語。『三国志』『水滸伝』など中国古典でおなじみの渡辺仙州氏が書いたチャイニーズホラーファンタジー。
『封魔鬼譚——尸解』の続編にあたるこの作品では、物語の舞台は前作の泉州から少し北東に行った福州へとうつります。妖魔退治専門の白鶴観の仕事で、李斗は道士仲間の花蘭ととも福州へとむかいます。事件を調査していくなかで碧紫仙子という少女とであいます。彼女は福州の有名な占星術師で、飢饉や地震などさまざまな予言をおこなっては的中させてきました。
物語の副題になっている「太歳」は「歳星」ともいい、木星のことです。中国では、すべてのものは「木・火・土・金・水」の五つの要素からなりたつという「五行説」の考えがあります。太陽のまわりをまわる火星・土星・金星・水星・木星の名前はこの五行説がもとになっていて、このなかでもっとも重要なのが木星とされていました。十二年で天体を一周するというきりのよさから天体観測や占星術などでよく利用されていました。
中国では、この木星の運行にあわせて地中をうごく、「太歳」とよばれる目のたくさんついた肉の塊がいるとも信じられており、これを掘り起こせば災いが起こるとされています。
福州でつぎつぎと起こる怪事件の原因を、碧紫仙子は「太歳を掘り起こしたせいだ」といいます。しかしそれを鵜呑みにできない白鶴観のメンバーは、事件の真相解明にのりだします。そして李斗は、碧紫仙子と白鶴観との対立のなかで、さまざまな決断をせまられることになります。
太歳は存在するのか? 李斗とともにその真相を解きあかしてみてください。
中国古典文学に精通している著者が満を持して書いたチャイニーズホラーファンタジー。14才の少年李斗を主人公に、魔物になりながらも、自分らしく生きようと迷う姿を描きます。第2弾は李斗の初恋編です。