島原でキリシタンが蜂起した。首謀者とされる天草四郎は、白狐魔丸には使えない術をもっていたーー。大好評・歴史ファンタジーの第5弾。
受賞歴:
★刊行時に寄せられたメッセージです
普段、ぼくはよく動物を登場させて絵本を描いている。
斉藤洋とのコンビでも、ペンギンやらシロクマが出てくる本もある。
このシリーズ「白狐魔記」は狐が出てくるとはいえ、その狐は人間に化身する。そして、時代を見つめ、思考し、生き抜いていくという歴史物である。
まさか、ぼくがこのシリーズの絵を担当するとは思ってもいなかった。作者である斉藤洋も思ってもいなかった。
ことの発端は、この本を出す責任のある立場の方が「高畠純ではどうか」と提案したことにあるという。
そのとき斉藤洋はこう言った。「えっ、……あのシロクマを描く高畠純ですか?」と。
ぼくは歴史物といえば、『新・平家物語』の吉川英治、それに絵をつけた画家の杉本健吉を思い出す。ぼく自身はといえば時代物は描いたことがない。それに、タッチがまるで違う。
しかし、こともあろうに、斉藤洋はその提案に「……いいかもしれない」などと思ったという。
そんないきさつがあって、このシリーズの絵を担当することとなった。
ならば、それらしくぼくも構え、イラストという言葉から挿絵という言葉に、洋物イメージから和物雰囲気へと変えることとした。
描くにあたっては、資料が必要である。武士ならばその時代のヘアースタイルから衣装、履物、馬の飾り、また、家の中では燭台の格好やら、床は板状なのか畳なのか、等々。
原稿が届くと、一冊につき十点ほどの挿絵でいいはずではあるが、すべてのページを頭の中で映像化して読み進める。
このシリーズは今回で五冊めである。一冊めから比べると挿絵の数が多くなった気がする。「ここも描いてみよう、あそこも描いてみよう」などと進めた結果だと思う。
新刊『天草の霧』、天草四郎が登場する。伝説的には美男子とされる天草四郎。ところが、作家斉藤洋は彼を「饅頭顔」と表記しているのだ。随所に「饅頭顔」と出てくる。どうも「美男子」という言葉から距離をおきたいらしい。斉藤洋の姿勢が見え隠れするからおもしろい。しかし、絵を担当するぼくとしては、読者を裏切ってはいけない。裏切らず饅頭顔……。
このシリーズ、まだまだ続くという。ぼくとしてはまた新たなる時代に挑戦である。
それにしても、斉藤洋は偉い!
ぼくもいわせてもらう。
「すっとぼけたペンギンやシロクマの話を書く斉藤洋が、テイストをグッと変えて時代、歴史を語る。そんな斉藤洋、偉い!」。
高畠 純