母親の長期入院のため、小学5年生の原口透子は、若狭湾の小さな町で日用品店を営んでいる祖父母と暮らすことになった。そこのはなれに「ぱんちゃん」とよばれる自閉症の青年が引っ越してくる。彼は絵が得意で、なぜか海の近くの坂道ばかりを描いている。そんなぱんちゃんに興味をいだきはじめる透子。彼女も現実世界に自分の身の置き場をさがしていた。
受賞歴:
★刊行時に寄せられたメッセージです
『あの花火は消えない』は、ひとつの夏のあいだの、小さな物語です。
小さな物語なのですが、この物語は、大きな特徴を持っています。
それは、持って生まれたある不自由さのなかで、主人公たちが描きだした物語だということです。
すこし風変わりな女の子と、一本の坂道の絵を描く自閉症の青年が、海辺の小さな町で出会い、共有する時間。夏の光に照らされたその時間のなかで、無我夢中で日々を送り、何かを得て、そして失う物語です。
理解すること。
信じること。
そして、下を向いてしまわないこと。
願わくは、生きづらさを抱えた人の心に、主人公の成長が、ほのかな光を届けてくれますように……。
主人公の原口透子は、周囲の人たちとうまく接することができず、自分の居場所をさがし求めています。そんな彼女を見守る人たち、そして、はなれに住む自閉症の青年「ぱんちゃん」、彼らとすごした7年前の夏は、透子にとって、かけがえのないものになりました。
子どもだけでなく大人にも、ぜひ読んでもらいたい作品です。