呉服屋に奉公に出た吾一は過酷な現実に歯をくいしばる。古いものと新しいものが混沌としていた明治の時代に、夢を追い続けて生きる少年の心の成長を描いた、作者の自伝的名作。
1887年栃木県の呉服店の長男として生まれる。高等小学校卒業後、東京浅草の呉服店に奉公に出され、翌年郷里に戻る。東京帝国大学独文科卒業。作品に、戯曲『嬰児殺し』『坂崎出羽守』『ウミヒコヤマヒコ』、小説『生きとし生けるもの』『真実一路』『路傍の石』など。戦前戦後を通じ、「日本少国民文庫」や少年少女雑誌「銀河」などの編集にたずさわり、青少年文学の発展に尽くした。1974年没。『山本有三全集』(全12巻)がある。