世界遺産の町サフランボルでくらすエブラール。かわいらしい木造家屋の2階は、お母さんがきりもりする小さなペンションになっています。エビム(トルコ語で、「わたしの家」という意味)というペンションの名前は、お客さんに自分の家のようにくつろいでほしいと願ってつけられました。エブラールは、お母さんの仕事を手伝ったり、トルコの伝統的な料理を教わったりしながら、石だたみが広がる美しい町でくらしています。
将来友だちになるかもしれない、だれかの毎日。世界36か国で写真家が撮り下ろした、「世界のともだち」シリーズの24巻目。
受賞歴:
エブラールとの出会いは本当に偶然でした。トルコが大好きで、この国を担当することになったわたしは、どこの町でどの子どもを撮影するかもわからないままトルコへ向かいました。1か月かけてトルコを旅すれば、きっと主人公になってくれる子どもに出会うはず! その旅の途中で訪れたのがサフランボルでした。絵本の中に入りこんだようなかわいらしい町にすっかり魅了され、翌日トルコ中部へ行く計画をキャンセルし、すぐに町の小学校へ向かいました。取材許可を得るために校長室をたずねると、たまたま部屋に入ってきたのがエブラールでした。白いマフラーを帽子のように頭に巻き、少しはずかしそうな笑顔であいさつをしてくれたのがとてもかわいかったです。数日後、エブラール一家は温かくわたしをむかえいれてくれました。その日からエブラールと同じ部屋でくらす生活がはじまりました。朝から夜寝るまでずっといっしょ、なわとびをして遊んだり、写真を撮りあったり、2014年の新年もいっしょにむかえました。春には日本からわたしの母をつれてエブラールの家に滞在しました。いつのまにか取材を忘れてエブラールの一家との生活を心から楽しむようになっていきました。
トルコは親日国として知られています。サフランボル旧市街の中心には小さな日本庭園があり、新市街にあるお店の入り口には日本の国旗がさりげなく置かれています。カフェで日本語を勉強する学生や住民の方がたにも出会いました。今回わたしがエブラールの家族との暮らしの中で触れた、人の心の温かさを、いつかトルコを訪れる日本の子どもたちにも感じてもらえたらうれしいです。