1922年に新潟で生まれた完司少年は、外国へのあこがれから満州で働くことを選びます。しかし、楽しかった満州でのくらしは、召集令状によって終わりをつげました。釜山から出発し、戦地であるグアムへ行くことになったのです。到着直後の攻撃で左足を失ったあと、米軍の上陸により、完司さんはジャングルの中でひとり生きていかなければなりませんでした。
食料をなんとかして手に入れ、切りっぱなしの足を川や海で洗い、這いずるようにして移動する生活がはじまりました。持ち前のポジティブさと聡明さを生かし、ジャングルの中で生き抜いていく姿は、まるで冒険記のようです。
そんなサバイバル生活やその後の捕虜生活のことを、楽しかったこともあったと、ひょうひょうと語る完司さん。でも、戦争に行って帰ってくるまでの時間は自分にとって「この世にない時代」だったといい、最後にふと、こうもらします。
「戦争は、あの若い、いちばんいい時期を奪ってしまったのですよ。今ほしいものがあるとしたら、若さです。あの体力と機敏さがあったら、あれもこれもするのに、と思いますよ。」
好むと好まざるとにかかわらず、不条理にみながまきこまれる。そんな戦争の時代を生き抜いた、ひとりの青年のお話です。
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もくじ
第1章 コケとシダ
第2章 世界を見てみたかった少年
第3章 はだかのミノムシ
第4章 遠い戦争
第5章 大平原を走りまわる
第6章 土地風のくらし
第7章 記憶からぬけおちていた満州
第8章 この世にない時代
第9章 ヤシガニ完司のカメ生活
第10章 ヒキガエルとジャングルコーヒー
第11章 屍のある仏教画
第12章 日本は勝ったのかもしれない……
第13章 「この世にない時代」の終わり
あとがき
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受賞歴:
この本を読むと南の島に永い間こもって戦っていた?横井さんの事を思いだします。私も兄2人が戦死しております。長兄はニューギニアにて戦死しましたが遺骨はもどって来ませんでした。戦争は仕かけた国も受けた国も多大の損害をもたらします。決して得るものはありません。世界中の国が平和になってもらいたいものです。(読者の方より)
「戦争は、あの若い、いちばんいい時期をうばってしまったのですよ」という言葉が印象に残ります。戦争ではありませんが、今はコロナウイルスの影響で、息子たちは学校で学ぶ機会、修学旅行や運動会など様々な体験をする機会が、自らの意思と関係なく失われています。戦争を生きぬいた完司さんのお話から、何かを感じとってくれたらと思い、子供にすすめました。私自身はジャングルで400日すごす知恵はどのようなものなんだろう?と思い、手にとりました。昔の人の生きる知恵はすばらしいと思いました。(12歳と9歳・お母さまより)