神さまが人間になってみた。人間の苦しみや喜びを実感して、ささやかな幸せを知った。ちょっとユーモラスでシニカルな詩の数々。
1954年、アメリカ、ヴァージニア生まれ。『メイおばあちゃんの庭』でニューベリー賞受賞。絵本、幼年童話、『ヴァン・ゴッホ・カフェ』『十月のみずうみ』『人魚の島で』などの短編ほかで、高い評価を受けている。
1943年東京都生まれ。1985年ベルギー・ドメルフォフ国際版画コンクールにて銀賞受賞。『ガドルフの百合』で小学館絵画賞受賞。作品に『ほんとうらしくうそらしく』『マルスさんとマダムマルス』『はだしのカエルとはだしのライオン』『ヘッセの夜カミュの朝』など。
★刊行時に寄せられたメッセージです
ここには23篇の詩がおさめられています。どの詩も神さまが地上におりてきて、人間がふだん行っていることをやってみせます。
パーマネントをうまくかけられるようになろうと、ビューティースクールに通い、野良犬を見て、さんざんためらいますが、最後にはひろって飼ってしまいます。
ボートにのって湖をぐいぐい漕ぎまわり、ニューヨークで一番おしゃれな店でソファを買い、バーでは殴り合いをして逮捕されます。
そしてちょっと足許がふらついた朝、おいしいコーヒーをもって、リンゴの木の下に座り、小鳥の声をきいて幸せを感じます。
神さまはいろいろなものをつくりました。この世にあるすべて、木も草も風も月も岩も雨もトラもゾウもミミズもオケラも人間も、みーんな神さまによってつくられたのです。そしてそれらはすべて、神さまにとってよきものでありました。
しかし万物は移りゆきます。
花も姿を変え、人間も歳をとります。そこに痛みや苦しみが生まれます。
変わらないのは神さまだけです。
永遠なる神さまには、変わっていくものの切なさがわからないのです。
こうして神さまは地上におりて、人間と同じ行いをしてみて、人間の気もちをわかろうとしたのがこれらの詩です。
ライラントの慎ましやかで、暖かい作風が好きでした。ついに訳詩までしてしまったわけです。(ささめやゆき)