

とれたボタンを入れておく1枚のお皿。ボタンたちが語る、謎とロマンと冒険うずまくそれぞれのボタン人生。奇想天外な面白さ!
受賞歴:
★刊行時に寄せられたメッセージです
これは、手の平ほどのお皿にのった、取れたボタンが語る、それぞれの人生の話です。みなさんの家でもそういうボタンは、お皿や缶や箱だのに入れて、まとめているのではないかしら。そしてたまには、一つ二つを手にとって、ついていた服のことを思い出すのではないかしら。でも、それをわざわざお話に書こうだなんて思わないですよね。実は私も同じでした。
ところで人は、枷のようなものをパカンとはめられ、手足を動かせるのはその中だけ、という状態に陥ると、急にどこかのスイッチが作動し、その中でめいっぱいの広がりを確保しようともがいて、ふだんは思いもしないことを思いつくものです。
『お皿のボタン』は、「一週間に一回。千字の読みきりを八話。でも全体でひとまとまりの話を新聞に書いて」という「枷」の中で、日常のくらしをぐるぐると思いめぐらすうちに、あっと行きついた題材でした。
ボタンなんて小さなつまらない物。それを載せてるお皿だって小さい。でも真面目にじいっと目をこらしてみれば、見えてくる見えてくる、一つ一つが秘めている思い出、憧れ、経験、歴史、そして現在の共同生活……。どこまでも手足を伸ばせる、枚数を問わない長編小説であれば、何でもたっぷり書くことができるのは当たり前です。(成功するかどうかは別として)でも、狭い場所で小さな事を扱っても、案外、広がっていくことは出来るんだなあ、と(成功してるかどうかは別として)このお話を書いてみて思ったのです。
——などと神妙なコメントをつけましたが、実は、かなりふざけた話なのであります。もとが新聞ということもあり、子供の人と大人の人、両方に向けて書きました。読んでいただけたら嬉しいです。(たかどのほうこ)