





むかしむかしのお話です。あるとき、お姉さんが頭が痛くて寝ていると、枕もとでゴソゴソ音がしました。目をあけると、小さな小さな貴公子が立っていて、こういいました。「この部屋を馬車がとおるのを、お許しいただけないでしょうか? 妹がきょう結婚式をあげるのですが、雨で道がぬかるんでしまったのです。」しばらくすると暖炉から、白ネズミにひかれた小さな馬車がやってきました。乗っているのは、銀色のドレスを着た美しい花嫁です——。19世紀を生きたポーランドの女性社会運動家が書き残したおとぎ話を、日本オリジナルで絵本化しました。優美で繊細なお話にぴったりの絵で、贈り物にも最適です。
白ねずみに引かれた小さな馬車。銀色のドレスを着た花嫁。はなやかに、おごそかに進んでいく花嫁行列……。この絵本には、美しいおとぎ話のイメージが満載で、ページをめくるたびに、ほうっとため息が出てしまいます。でも、物語を印象深くしているのは、その美しさだけではありません。わたしが最初にこのお話を読んだとき、「あれ?」と思ったことがあります。それは、花婿である王子の容貌がパッとせず、花嫁の兄より見劣りする、などと書かれていること。そして、結婚式を終えて戻ってきた新郎新婦の描写も曰くありげです。花婿が幸せいっぱいの笑みを浮かべる一方、花嫁はほほを泣きぬらしているのです。その涙は、嬉し涙か、はたまた……?
作者のジミホフスカは、19世紀を生きた女流作家であると同時に、ポーランドでは女性の教育のために奔走した社会運動家としても知られているそうです。その作者がこの物語に託したメッセージとは、一体なんだったのでしょうか?
これは、一見シンプルだけど実は単純ではない、おとぎ話です。
美しい姫は、人民のため自らを犠牲にして、あずまやの王子と政略結婚したのでしょうか。女が道具として使われることはどこの国にもあったこと、そして途上国では今でもそんな理不尽が存在するよう……婚姻に限らず、性差別はなくなってほしいです! 王子の表情がいかにも愚鈍に描かれ、理知的な姫と対象的ですね。(50代)
布川愛子さんの美しく繊細な絵が印象的でした。我が家の娘の名前が花なので花よめさんの絵本は、幼き子供の興味をくすぐらせるかな?と思い、親の好みで決めました。(5歳・お母さま)