冬のある日、初めての雪を見た子狐はおおはしゃぎ。やわらかい雪のうえをかけていたらすっかり手が冷えてしまいました。
「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする。」
そこで母狐は、人間の町で、子狐に毛糸の手袋を買ってあげようと思います。子狐の片手を人の手にかえ、銅貨をにぎらせて、「かならず人間の手の方を差し出すんだよ」とよくよくいいきかせます。
トントン。
「このお手々にちょうどいい手袋ください」
ところが、子狐はお店でつい、狐の手のほうを出してしまったのです。子狐は無事に手袋を買えるのでしょうか。
母親の子を思う気持ち、子狐の緊張感が文章からあふれるように伝わる新美南吉の名作を、黒井健が情感豊かな絵で表現したロングセラー絵本。
1913年愛知県に生まれる。東京外国語学校英語部文科卒業。中学時代より文学に興味をもち、童話・童謡・詩・小説などを書き続ける。1943年没。その作品は民芸品的な美しさと親しみ深さを感じさせ、今も多くの人に愛されている。主な作品に「ごんぎつね」「てぶくろを買いに」「おじいさんのランプ」などがあり、全業績は『校定 新美南吉全集』(全12巻)に網羅されている。
1947年新潟県に生まれる。新潟大学教育学部中等美術科卒業。出版社勤務を経てイラストレーターとなる。主な絵本作品に『ごんぎつね』『手ぶくろ を買いに』『ミシシッピ』『雲の信号』『雲へ』『おかあさんの目』『かぜのひのころわん』など多数。 2003年に山梨県清里に「黒井健絵本ハウス」を開設。
きれいな絵でとても気に入り何度も何度も読みたがります。少し早いかな?と思いましたが、「きつねのお手々出しちゃったね」と内容を把握しており、就寝前の読み聞かせの定番となりました。いつ読んでも名作ですね!(3歳・おばあさまより)
黒井健さんの心を包み込むような絵が、とても好きです。孫は男の子ですが、子ぎつねがおててを間違えて差し出してしまうところで、泣きそうになります。あまりの可愛さ、いじらしさに。(10歳・おばあさまより)
新美南吉さんの美しい物語の世界に引き込まれました……。人間を恐れない子どものきつねの純粋さに心うたれます。黒井健さんの絵も、雪の日の静けさ、冷たい空気が伝わってくる様で、すばらしいです。(8歳・お母さまより)