取材日記

愛しのアフマド

2016/07/07

『エジプト』取材日記の2回目(1回目はこちら)は、主人公のアフマドくんについて。常見さんの愛情いっぱいの文章から、アフマドくんの優しい人となりと、彼の、いろいろな意味で「濃い」毎日のようすが伝わってきます!

アフマドのつぶらな瞳と愛くるしい笑顔に一目ぼれしてしまった私は、彼がいくところどこにでも、金魚の糞のようについていき、しつこく写真を撮りまくりました。心優しいアフマドは、内心あきれながらも、カメラをまえに、いつもはにかんだ笑顔を向けてくれました。

ところでエジプトでは、家族のあいだでもニックネームで呼びあうことがあります。アフマドのニックネームは「トゥ-タ」、弟のオマルは「ボスボス」。カメラ目線がほしいときに私が「トゥ-タ」と呼ぶと、すかさず私のほうを向いて「ニコッ」としてくれるアフマド。1日に30回はこれをくりかえすのですから、さぞかし疲れたことでしょう。

ダルス(塾)通い

エジプトの子どもたちは、ほとんどが放課後に「ダルス」という塾に通っています。アフマドも休日の金曜日以外は毎日ダルス通い。ダルスの先生はといえば、なんと学校の先生! 場所は先生の自宅です。

アフマドの家に、先生と生徒が集まって授業をすることもあります。

趣味の音楽と演劇

ダルスの合間にも趣味の音楽を習ったり、演劇クラブに参加したり。演劇クラブのメンバーは、ほとんどが大学生や社会人。心優しいアフマドは、誰からも好かれています。

休日は家族や親せきと

休日の金曜日は、たいてい家族で遊園地や「クラブ」という社交場に出かけます。

親せきの家を訪ねることも多くあります。お母さんは一日に何度も自分の姉妹や両親と電話で話をします。「人生でもっとも大切なのは、家族や親せき、友人たちとのつながり」。これがエジプト人の価値観です。

猫も大事な家族

家族は大の猫好きです。お父さんは子どものころから猫を飼ってきました。寝るときに「明日、朝6時に起こして」と猫につぶやくと、本当に6時に起こしてくれたそう。学校から帰ってくるときには、ドアのところでちゃんと待っていたとか。

ある日、母猫のラシが、私が寝るベッドの上で出産しました。生まれた子猫は、なんと9匹!

家族、親戚、友人たちとの密な関係のなかで、勉強に遊びにいそがしい毎日を送るアフマド。やがて大人になったら、両親と同様、人とのつながりを大切にする家庭を築くことでしょう。

今から将来のアフマドに会うのが楽しみでしかたありません。

(写真・文 常見藤代)

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常見藤代

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1967年群馬県生まれ。写真家・作家。上智大学法学部卒。2003年よりエジプトの砂漠で1人で遊牧する女性サイーダとくらし、全国各地で写真展、講演会を開催。2011年「第9回開高健ノンフィクション賞」最終選考ノミネート。2012年「第19回旅の文化研究奨励賞」受賞。著書に 『女ノマド、一人砂漠に生きる』(集英社) 『砂漠のサイーダさん』(福音館書店) 『ニワトリとともに』(農文協) 『女ひとり、イスラム旅』(朝日新聞出版)などがある。

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