カオリとバナナは、チューリップの球根の女の子。土の中で来年の春にきれいな花を咲かせる準備をしていたのですが、秋の夜、満月の空からあらわれたキューコンチョーにさらわれてしまいます。海をわたるとちゅう、キューコンチョーから落ちたバナナはジャワ島に流れ着き、カオリはそのままトルコの宮殿に運ばれてしまいました。
きれいな花を咲かせることを夢みる球根の女の子たちが、チューリップがどうして人を幸せな気持ちにすることができるのか、その秘密を知ることになる物語。
銅版画家、山本容子が初めてストーリも手がけた絵本。
受賞歴:
春のきざしにうれしくなって雪の上でつまさき歩きをする犬のルーカス。陽ざしがあふれる森の花や動物たち。南の島のサルと踊るコミカルなダンス。美しい壁画で飾られたトルコの宮殿……。山本容子さんが初めてストーリーもご自分で手がけた新作絵本は、ページをめくるたびに、読者の目を愉しませるイメージが次々に繰り広げられる贅沢な1冊になりました。
絵本の主人公はカオリとバナナ。2人はチューリップの球根の女の子です。小さい頃からチューリップが特別に好きだったという山本さんが、1920年代のアメリカのポピュラーソング「チューリップ畑をつまさきで」に触発されてこの絵本が生まれました。
山本さんの銅版画にはいつも絵を読み解く愉しみがありますが、自らのストーリーに絵をつけた今回の作品は、まさに物語る絵の魅力に満ちています。1枚の絵の中には流れる時間が描かれて、登場人物たちの動きや感情を伝えます。視線をたくみに導く構図に誘われて絵を読んでいくと、そこには大きな筋とは別にいくつもの小さな物語があるのです。エッチングで刻まれた書き文字をゆっくりとたどりながら、この賑やかで楽しいオペレッタのような世界を味わってください。
山本容子先生の絵が大好きでいろいろ集めています。ストーリーがまた愉快で壮大でワクワクします。どこからこんな楽しいお話が出てくるのでしょうね。絵がすばらしいのはもちろんです。花も動物も一人一人がちがう表情をしていて、見飽きません。すばらしい絵本をありがとうございます。(80代)
優しくきれいで、リズミカルな絵本ですね。山本容子さんの銅版画、大好きで、手がけられた絵本、大好きです。富山は県花がチューリップなので、広めたい絵本のように県民として思いました。やわらかく心がふわっとしました。(読者の方より)
いとこの娘のバレエの発表会があるのでバレエの絵本を探していましたが、踊っているチューリップが楽しそうなので、プレゼントはこの本にしました。先生がきびしくておこられてばかりのようなので、楽しく踊っていたらいいなと思いながら。(5歳・ご家族より)