

岩手県出身で子ども時代をを遠野でくらした編著者が、柳田國男の『遠野物語』から、物語として伝えたい作品をまとめました。虚構と現実の混じり合う物語は、ご近所の話でもあります。森の中に突如現れ消える家「マヨイガ」、その子どもが住みつくと家が栄えるという「ザシキワラシ」、年をとって妖怪になった動物「フッタチ」のことなど、言い伝えとも昔話ともつかない不思議でこわい物語を赤いカッパが語ります。ちなみに遠野のカッパはみどりではなくなぜか赤いのです。12の不思議な生き物やものにわかれています。
受賞歴:
遠野物語は、とても不思議で、とても変わったお話です。オシラサマやオクナイサマや座敷童子の、たくさんの神様、山人、ヤマハハ、カッパ、フッタチという動物たち。たくさんの不思議なものたちが、あの小さな山あいの町をとびまわるのです。
遠野のカッパの顔は赤いのです。座敷童子はいい神様でしょうか?かわいらしい様子なのに怖い神様のようにも思えます。山や川に住んでいる男も女も怖くて悲しくて残酷で、時にユーモラスです。遠野の不思議なものたちは、個性的です。
これらのお話は遠野物語として世の中に出ていくまで、おじいさんやおばあさんが囲炉裏端で、子や孫に言い伝えてきたお話です。その長い間に、遠野のおじいさんやおばあさんは結末をつけくわえることをしませんでした。
私は三才から小学校二年生まで遠野で暮らしました。そのころ、私は遠野物語を知りませんでした。あの山にあの川にあの町に、こんな不思議なものたちがひそんでいることを知らなかったのです。でも、子どものころの私のとなりに、カッパや座敷童子やヤマハハがよりそっていてくれたように思えます。赤いランドセルをせおって山道を帰る私に、
「さっさど、帰れ!」
と、山の中から、だれかがいったような気がするのです。(編著者あとがきから)