

少年と老人は、無事カナダにたどりつけるのか――最初から最後まで、はらはらしどおしのストーリーで、一気に読んでしまいます。
ハリソンにむりやり連れてこられた少年サミュエル。最初のうちは、おびえているばかりで、足手まといになっていますが、しだいにハリソンの体を案じるまでになり、ハリソンが病に倒れてからは、必死に守ろうとします。
ハリソンも魅力的なキャラクターで、怒りっぽくて、サミュエルがあれこれ尋ねると、「うるさい。寝てろ」などというのですが、奴隷として生まれた自分たちの人生について、自分の過去について、ぽつりぽつりと語ります。ときに皮肉っぽく、ときに感情的に語るハリソンの言葉には、自分たちも人間であるという思いがこもっています。
この作品には、地下鉄道と称される黒人奴隷の逃亡に手を貸した人々に助けられながら命がけで逃げた奴隷の思いが丁寧に描かれています。
さまざまな資料から得た実話を下敷きにしているため、リアリティーがあり、感動的です。
人の命について、人が平等に生きるということについて、深く考えさせられる作品です。
黒人差別について書かれた本はこれまでに読んでいたが、逃亡していくその道のりについて書いてあるものは初めて読んだ。事実をもとに書いてあるということで改めて差別について考えさせられた。少年の目を通して書かれているもので、少年と共に逃げ少年の目を通して、大人の苦しみとまた悲しみを読み手が受け取ることができた。小学校高学年から、中高生を中心に様々な年代の人に読んでもらいたいと感じた。(50代)