「アラビアン・ナイト」を斉藤洋の語りでおくるシリーズ第一弾。バグダッドの商人シンドバッドの奇想天外な七つの冒険の物語。
受賞歴:
★刊行時に寄せられたメッセージです
『アラビアン・ナイト』は、何百年ものあいだ、たくさんの語り手たちに語りつがれてきた物語です。ひとりひとりの語り手は自分の言葉、自分の語り方で語ってきたのでしょう。そこで私も……、というわけで、私が語り手になり、できあがったのが、今回出版する『シンドバッドの冒険』です。
『シンドバッドの冒険』には、正体不明の怪物、怪人が次から次に登場します。
そういう怪物や怪人も不思議ですが、私がいちばん不思議に思ったのは、別のことです。どの航海でも、船出した商人の中で生きて帰ってくるのは、シンドバッドただひとりなのです。どうして、生還するのがシンドバッドだけなのでしょうか?
この謎について、私の『シンドバッドの冒険』でも、答えを出していません。これについては、読者の皆様がこの本をお読みいただき、ご自身でお考えいただきたいのです。
それから、七度目の航海に登場するやさしく美しい女性ですが、どうも私にはこの女性の正体がわからず、とても謎めいて見えるのです。
この人物については読者の皆様は、「えっ? どこが謎なの。ぜんぜん不思議じゃないじゃないか。」
とおっしゃるかもしれないし、
「なるほど、これは不思議な女だ……。」
とつぶやかれるかもしれません。
不思議と思うか思わないかは、人によってちがいます。もしかすると、私がまるで不思議に思わないところで、読者の皆様が不思議さを感じられることもあるかもしれません。読者の皆様が『シンドバッドの冒険』でいろいろな不思議を味わっていただければ、私はとてもうれしく思います。(斉藤 洋)