いまを忘れ過去に生きる認知症のおばあさんと、その亡き息子と思いこまれてしまった少年保。老いを見つめる少年とその心の軌跡。
福岡県生まれ。筑紫学園短大卒業。会社員や水泳連盟指導員などを経て、飯田栄彦氏の読書会に参加。これを機に創作をはじめる。1988年ミセス童話大賞優秀賞、1996年新見南吉童話賞優秀賞を受賞。そのほかの作品に『へそまがりパパに花束を』『たたみの部屋の写真展』がある。福岡県在住。
長崎市生まれ。45歳から独学で絵を描きはじめ、翌年雑誌「詩とメルヘン」のイラストコンクールで入賞、やなせたかし氏に認められ絵の世界に入る。2008年現代童画展新人賞受賞。そのほかの挿絵の作品に『たたみの部屋の写真展』がある。横浜市在住。
★刊行時に寄せられたメッセージです
去年の今ごろ、わたしは病院のベッドにいました。大きな手術をしたばかりで、気力も体力も弱っていました。そこへ、とびっきりの朗報が飛び込んできたのです。それは、以前から預けていた作品を、本にしてくださるということでした。
モノクロだった世界が、いきなりカラーに変わったみたいでした。と同時に、母が、もう少しがんばってごらんと、応援してくれているんだと思いました。
認知症だった母が亡くなって7年がたちます。母を想いながら書いた作品です。
ひょんなことから出会った少年を、亡くなった自分の息子だと思いこんだ認知症のおばあさんと、それにとまどう少年のお話です。そこに、長いあいだ離れて暮らしていた娘さんが加わります。けれどおばあさんは、娘さんを自分の子だとは思っていません。
おばあさんの時間は、決して前へは進まず、絶えず過去へと向かいます。
お互いを思っているのに、心がすれちがう哀しさ、あふれるほどの愛情があるのに、届かないもどかしさ。少年は、おばあさんと娘さんの間にたって、心を痛めます。
夏休みの間、少年は友だちや病院の先生と共に、おばあさんの日々にかかわっていきます。そしてある日、ふとしたことから、おばあさんが20年も前に埋めたという、宝箱の存在を知ります。
それは少年にとっても、おばあさんとの出会いを忘れられないものにしました。
宝箱に入っていたのは、何だったのでしょうか。
あとはどうか、本を読んでみてください。(朝比奈蓉子)
挿絵画家の金沢さんの絵が見たくて「竜の座卓」とともに購入しました。最初、「竜〜」を読みました。挿絵も十分あって満足。ところが、「たたみ〜」の方はほとんど挿絵が無くて、ぱらぱら見た時残念でした。でも、読み終えた時、最初の庭先の絵と、ところどころ出てくる小さな挿絵(財布や亀や・・・)で十分!挿絵と文章と、読み手の想像力の絶妙なバランスが取れていると思いました。また、大人の私が癒されました。なんだか、心のどこかにある願望が表現されているようで、、、。悲しい時とか、癒されたい時にはときどき開いて読みたい本です。大事にします。(40代)