5年前、ジェイミーの姉、ローズは、イスラム過激派によるロンドン同時多発テロに巻きこまれて亡くなった。それ以来、父さんは酒におぼれ、母さんは家を出て行き、家族はばらばらになってしまう。10歳になったジェイミーは、ローズと双子だったもうひとりの姉、ジャスミンと父さんといっしょに、ロンドンから湖水地方に移り住む。環境が変わっても、父さんは相変わらず働かず、ローズの写真をながめてばかりいる。父さんにとっていちばんたいせつなのは、そばにいる家族ではなく、暖炉の上に置かれたローズの遺灰が入った壷なのだ。そんなやり場のない気持ちをかかえたジェイミーを救ってくれたのは、父さんがもっとも嫌うイスラム教徒の女の子、スーニャだった。
ブラウンフォード・ボウズ賞受賞作。
受賞歴:
「ぼくの姉さんのローズは、暖炉の上においてある壺の中にいる」――この物語は、そんな一行ではじまります。主人公は、爆破テロでふたごの姉のひとりを亡くした十歳の男の子、ジェイミーです。父親はその悲しみから立ちなおれず、イスラム教徒を嫌悪しているのですが、ジェイミーは、イスラム教徒の少女スーニャとの出会いや、さまざまな葛藤をへて、そのすべてをうけとめて前に進めるようになります。きびしい環境にあってもいつもユーモアを忘れず、繊細にものごとを感じながら成長していくジェイミーの姿が胸を打つ作品です。ときには思いこみで突っ走ってしまう、少年らしい一面もまた魅力的で、この本の原書を読みおえたときには、ジェイミーのことが大好きになっていました。
凪の海でどこにも行けずにいた船が、突然の風を帆にはらんで進みはじめるように、人生には、ふとしたきっかけで一気に世界がひらけるときがあります。スーニャという新しい風にふれて異文化を知り、人生の真実に気づくジェイミーを見て、そんなことを思いました。この本を手にとって、ジェイミーに会っていただけたらうれしいです。(訳者より)
子ども心が、子どもの言葉で上手に書かれています。翻訳本とは思えない文章です。日本語に品があります。この訳者の本をもっと読みたいです。(60代)
イスラム教のスーニャがジェイミーを助けるというのに気になって買いました。主にジェイミーの姉のローズがテロで亡くなったことをきっかけに、面白いところもありました。私の父さんもイスラム教なんですが、私もスーニャのように自信をもって明るく行動できればいいと思いました。(16歳)
とても、今時な生きた言葉、会話の作品で、すぐに話にのめりこんでしまいました。日本の中で生活していると、テロは遠い国のことだし、異文化もちょっと身近ではないかな?と思いますが、世界に目を向けるとさけられない問題です。世界を考える時、こういう作品から入れば身近なものとしてとらえられるかな、と思います。(読者の方より)