ミミズは健康な野菜や穀物が実る〈生きている土〉を作りだす。地球にやさしい農業を求め続けたミミズ博士・中村好男さんの物語。
1953年、名古屋に生まれる。「プチ生物研究家」として、身近な生き物を素材にした作品を発表している。著書に『ぼくは農家のファーブルだ』『カブトエビの寒い夏』『ミミズが鳴くってほんとう?』『いもり、イモリを飼う』『とびだせ! にんじゃ虫』「バケツ畑で野菜づくり」シリーズ、『カブトエビの飼育と観察』『蛾ってゆかいな昆虫だ!』『コウモリたちのひっこし大計画』などがある。
1947年東京生まれ。御茶ノ水美術学院でデザインを学んだ後、イラストレーターとなる。第1回読売国際漫画大賞に入選。広告、出版の世界で幅広く活躍している。主な作品には『音楽をつくろう』『イラガのまゆのなぞ』『イラガのまゆのなぞ』『アリに知恵はあるか?』『なぜ大昔のことがわかるの』など多数。
★刊行時に寄せられたメッセージです
みなさんは、どんな生き物が好きでしょうか。ペンギン? ゾウ? ライオン? 身近なところではチョウやクワガタ、カブトムシなどが人気者でしょうか。この本で取り上げたのはたぶん、きらわれ者の仲間に入るミミズです。目の前に差し出されたら、「うへー!」なんて叫ぶ人がいるかもしれません。
でも、実はこのごろ、ミミズがとても見直されているんですよ。魚つりのえさにしかならないと思われがちのミミズですが、ほんとうはすごい力を持っている。そのことを、この本の主人公である「ミミズ博士」の中村好男先生に教えていただきました。
ぼくは、生き物が大好きです。農業にも関心があります。そこでこの本を書く前に、大冷害と「田んぼの草と虫」カブトエビをとりあげた読み物と、虫で虫をやっつける「農家のファーブル」を紹介する本をまとめました。
田んぼとトマト温室を舞台にしたのだから、「畑の話も欲しいなあ」と思うようになりました。そこで目をつけたのが、ミミズというわけです。それぞれ別の出版社から出していただいた本ですが、これでぼくの「農業三部作」の完成です。
ふしぎに思うかもしれませんが、ちゃんと管理されている畑にはミミズがいません。農家が一生懸命になればなるほど、土の中の生き物は減ってしまう。だから、「生きている土」を手に入れるためには、ふつうとはちがうやり方が必要になります。どうすればいいのかは、本を読んでからのおたのしみ。土の中の世界もなかなかおもしろいですよ。
考えてみれば、ぼくが興味を持つのはヘンテコな生き物ばかりです。ミミズやカブトエビ以外にもナナフシや蛾、イモリの作品を書いています。「今度は、わたしにしてくださいよ」。そう言ってくるのはどんな生き物かなあ。そう考えるだけで楽しい毎日です。(谷本雄治)