樹里がお誕生日プレゼントにもらったのはイグアナ。手間ばかりで全然かわいくないイグアナに、樹里はほとほといやけがさします。
受賞歴:
★刊行時に寄せられたメッセージです
まだインターネットのなかった頃、パソコン通信の時代でした。ワープロ専用機をダイアルアップで接続し、爬虫類好きの集う「部屋」を見ていました。石神井公園の池に、捨てられたらしいワニが出没するというニュースを新聞で読んで、強い興味をおぼえてから、それをネタにした物語を書きたいと思って調べていたのです。最初はワニのつもりだったのです。でも、その「爬虫類の部屋」には、色々なペットを深く愛している人々が熱い書き込みをしていて、カメ、ヘビ、トカゲなどの中からイグアナの存在が光り始めました。
「部屋」の常連かつ、主力である山内さんの豊富な知識とエピソードの面白さに惹かれて私はお宅に14匹いるという本物のイグアナをどうしても見てみたくなりました。ただ、私はまったく爬虫類ファンではありません。いや、どちらかというとアンチであり、実物のイグアナへの興味というのも、ある意味、怖いもの見たさなので、14匹に囲まれ迫られた場合、自分が正気でいられるのかどうか、まさにドキドキの冒険行でした。この取材がどんなふうだったかは、本書のあとがきに書いてあります。
『イグアナくんのおじゃまな毎日』は、こうして、山内さん宅のイグアナくん訪問から始まりました。その強烈なインパクトは、取材時に持っていたスラップスティックなファンタジーの構想をぶっとばし、できるかぎり等身大のイグアナくんを書くぞと180度の変化を見せました。かくして、ちょいブラックな動物もの? のコメディができあがりました。
誕生日に欲しくもないイグアナをプレゼントされてしまった樹里とその両親が、ものすごく大変な飼育の日々の中で、ばかばかしい喧嘩を繰り返しながら、少しずつイグアナに親しみを持っていく、そんな物語ですが、結構笑えるし、ペットとしては変わり種のイグアナのことがよくわかっていいなと自分では思っています。ぜひ、読んでみてくださいね。(佐藤多佳子)