会員それぞれが自作の怪談を披露しあう〈怪談クラブ〉。ぞっとする話から切ない話、滑稽な話まで、多彩な怪談をご堪能ください。
受賞歴:
★刊行時に寄せられたメッセージです
私が「七つの怪談」シリーズの第一弾『ひとりでいらっしゃい』の挿絵を描いたのは、16年も前のことです。なぜ私のようなド素人が描くことになったのかと不思議に思う方は、斉藤先生の著書『童話作家はいかが』(講談社)にそのいきさつが書かれていますので、ぜひそちらを読んでください。第二弾『うらからいらっしゃい』が出版されたのはその10年後。そしてさらに6年経った今回、めでたく第三弾『まよわずいらっしゃい』ができあがりました。ストーリーの上では夏休みの8月から10月までのわずか3ヶ月間の出来事なのですが……。
ところで、登場人物の西戸先生はじつは、ここだけの話、斉藤先生ご本人がモデルなのです。証拠その1は、研究室。私は『ひとりでいらっしゃい』の挿絵を描くとき、斉藤先生の大学の研究室に取材につれていかれました。だから学生たちが集まって怪談を語り合うあの部屋は、斉藤先生の研究室そのものです。証拠その2は、ラーメン屋さん。『まよわずいらっしゃい』の第四話に登場するラーメン屋の出前のおじさんは、まるで歯医者さんのような姿ですが、実際にあんな風な人なのです。私は最初、いかにもラーメン屋の出前のお兄さんといった感じの人をイメージして描いたのですが、「こうじゃないんだなあ」と先生にいわれ、取材に連れていかれたのは大学近くのラーメン屋さんでした。私はそこでタンメンとギョウザをごちそうになりながら、店のご主人を観察しました。本に出てくる冷やし中華は斉藤先生の好物にちがいありません。
それから思い出すのは、はじめて表紙を描いたときのことです。私は怪談だからなるべく恐く、と思い、「むらさきばばあ」が大口を開けてこちらを向いて立っている絵を描いてみましたが、却下! たしかに「いらっしゃい」シリーズはおどろおどろしい怪談ではありません。そこで次は、お話のモチーフとなるものを7つの怪談からそれぞれ抜き出して図案化し、貼り絵にしてみました。すると、抑えた中に不穏さがうまれ、文章の雰囲気にぴたりとくる表紙になりました。
いま、シリーズが三冊出そろい、テーブルに並べてみると、すべてのお話が表紙から立ち上がって来るように思えます。どれもこわいお話なのに、こわいだけではない、やっぱり斉藤洋ワールド全開の、ひと味ちがう怪談たちです。(奥江幸子)
怪談が好きなので、小学生の間はずっと童心社の怪談レストランを読んでましたが、中学生になりもう少し対象年齢が上の怪談の本を探しているときに、この『まよわずいらっしゃい』を本棚から見つけて夢中になって読んでしまいました。小学校四年ぐらいの時にも読んだ記憶がありますが、その時はあまり面白く思わなかったのに今回読んだらわかるようになっていた事で、自分が成長している事が実感できました。前作の『ひとりでいらっしゃい』と『うらからいらっしゃい』も読みたいと思います。次回作も楽しみにしています。(13歳)