

「けもの道」を山の頂からふもとまで、無人撮影のカメラでじっくり観察。森の動物たちの、いきいきとしたくらしが見えてきます。
受賞歴:
★刊行時に寄せられたメッセージです
日本に棲む野生動物の撮影は、世界でもピカイチほどに難しいと思います。
彼らは警戒心も強いし、地味な毛色をしているものも多く、ひっそりと生活しているから出会うだけでも大変です。そうした動物を作品レベルまで持ちあげて撮影するには、さらに高度な技術が必要となります。そんなことから、動物のもつ派手さや撮影の手軽さを求めて、アフリカとかアラスカ、カナダといったような外国へ出かけてしまう人も少なくありません。
しかし、日本の動物は難しいからこそ、それに向かっていく楽しさがあります。そしてなによりも、日本という国の大自然のなかに、昔から営々と生きてきた歴史をもつ生きものばかりですから、彼らを知ることは、すなわち彼らの土俵である、四季がはっきりしている日本の「自然」のしくみ、を知ることとなります。
こうして、自然を知ると、あらゆる植物や動物たちが絶妙なコンビネーションで関係しあいながら、生命をまっとうしていることに気づきます。
そこで、いつも観察をつづけながら、次にはどのような「絵コンテ」を描いてみるかと夢をみます。そうした夢があると、あとは時間をかけてじっくりと撮影です。ときには、カメラを手づくりの防水ケースにいれて、一年間以上も野ざらし状態にしながら、一回だけのシャッターチャンスを待つこともします。また、撮影目的によっては、それ専用のカメラに改造してしまうことまでしてしまいます。
こうするのも、野生動物たちとは「何月何日の何時何分に来て、ポーズをとってください。」なんて人間と交わすような約束ができないからです。言葉の通じない動物を相手にするには、待ちにまって、ただひたすら時間をかけるしかありません。
ボクの写真動物記は、いつもこうして作品がうまれていくのです。(宮崎 学)