なにもわすれることがないように、リスは家じゅうのかべに、小さな紙きれをはっておきました。そのうちのひとつ、すみっこのほうの紙きれには「ぼくのたんじょうび」と書いてあります。
「ほんとうだ! もうすこしで、わすれるところだったよ! ぼくのたんじょうびを……」
待ちにまった当日、リスは招待した動物たちにたくさんのケーキをふるまい、いっしょにダンスをおどり、とびきりすてきな1日をすごすのですが……。
わすれっぽいリスの、わすれられない夜を描いた表題作「リスのたんじょうび」と、8つの小さな物語。オランダの国民的作家がおくる、宝物のような短編集です。
何とも言いようのない不思議さとやさしさとおかしさを感じさせる世界観がありますね。意外な展開のストーリーに魅了されました。私もリスたちの友人となって仲間入りしてしまいました。現実逃避かもしれませんが、この世界に入り込んでいやされています。(60代)