てんぐが手打ちの本格的なおそばやさんを始めました。ちょっとかわったそのお店は、ふしぎなお手伝いがたくさんいるのです。
1967年、大阪に生まれる。東京造形大学美術一類学科中退。あとさき塾の参加をきっかけに絵本に興味を持つ。以後児童図書の世界でジャンルを問わず活躍。おもな作品に『じゃぶじゃぶパパ』などがある。
★刊行時に寄せられたメッセージです
私はお店屋さんが好きです。応援したいのは、小さいけれどもこだわったものを提供する店です。そこにはキリッとした誠実そうなお姉さんがいたり、お客にこびないガンコなおやじさんがいたりします。みんな自分の仕事が大好きで、自信をもって働いています。
今回はそば屋のおはなしを書いてみました。作り方から食べ方まで、こだわるところがたくさんあるそばは、私にとって以前からとても興味深い食べ物だったのです。 主役は「和」のイメージからてんぐにおねがいしました。自分の打つそばに大変な自信を持っていて、たびたびそれを自慢したがる愛すべきキャラクターです。てんぐがテングになったりするわけです。
このてんぐが、そば屋をひらいたところからおはなしがはじまります。「天狗庵」は、なみ木通りに突然できたのです。気持ちよくてんぐを助けてくれる人もいれば、歓迎していない人もいるでしょう。なにしろてんぐなのですから。
ふるさとの山には、個性的な仲間もそろっています。もうひとり「このは」という愛らしいキャラクターが現れて、そば屋とおはなしをしっかりとサポートしてくれます。
どうぞみなさん、なみ木どおりの「天狗庵」にいらしてください。そしていろいろな人とかかわりながら、元気にやっているてんぐの様子をのぞいてやってください。もちろん、打ちたてのおいしいそばもめしあがっていってくださいね。(伊藤充子)