

たまねぎやキャベツなど、春においしいやさいをたのしく紹介します。きっとやさいがすきになる! おもしろくわしいやさいの本。
★刊行時に寄せられたメッセージです
本には、いろいろなできかたがあります。この「やさいむらのなかまたち」の最初のきっかけになったメモ帳を開いてみたら、なんと日付は1999年11月 21日となっていました。二人の娘との旅の車中で、いたずらに描きはじめたやさいたちのプロフィール。おもしろがってみてくれた娘たちはもうすっかりおとなです。なんて、長い時間がたってしまったのでしょう!
もちろん、十年の間ずっとこの本を描きつづけていた訳ではありません。間に大きなブランクがありました。やさいたちのことを描きはじめ、一冊の本の形が見えはじめた頃、世の中にお笑いがブームがやってきました。中には、ひとの容貌をネタに笑いをとる、不愉快なものもありました。それを観ていて、ふと自分が描いているものに疑問をもってしまったのです。
私は子どもの頃は大変な偏食、やさいがほとんど食べられませんでした。青白く、ひょろひょろしていて、「もやし」とあだ名をつけられました。給食が食べられない辛さと、「もやし」と言われて笑われた悲しさが、どっと思い出されました。この本が、だれかを傷つけるきっかけになっては…、私はラフスケッチを閉じてしまいました。
そして、何年もたった頃、「ねえ、やっぱり、あれ、おもしろいです。本にしませんか?」忘れずにいてくれた編集さんが、声をかけてくれました。ふと、心が動きました。そんなに言ってもらえるのなら、もう一度考えてみようと。
色とりどりのやさい、いろんな形、いろんな味…その個性をすっぽり包みこめるような、楽しい本にできたら? と思いました。どの個性も素敵で大切なものなんだって、手をつなげるような世界ができたら素敵だな…と思いました。
それが、実現できたかどうかは、まだわかりません。でも、八百屋さんで、ひとつずつ手にとりたいようなかわいい野菜たちを、描いていきたいと思っています。
ひろかわさえこ