権大納言は、山でみつけた不思議なきのこを食べさせ、陰陽師を踊らせようとしますが…。『今昔物語集』の世界をあざやかに絵本化。
受賞歴:
★刊行時に寄せられたメッセージです
くるくる巻かれた長い紙を端からひろげていくと、物語と絵が交互にあらわれる、絵巻物、というものがあります。絵本の原型みたいなものです。
平安時代から鎌倉時代にかけて、『信貴山縁起絵巻』や『伴大納言絵巻』など、絵巻物の傑作がたくさん作られました。私はふだんから、そんな絵巻物の画集を見て、模写したりするうちに、絵巻物みたいな絵本を作りたいと思うようになりました。
いっぽうで、日本の古典文学を、注釈を頼りにしながら、読むのも好きです。特に、数年前から楽しみながら少しずつ読んできた『今昔物語集』の、エネルギッシュで、滑稽で、不思議な世界に興味を持ちました。そして、その中のお話のいくつかをつないだり、間をおぎなうお話を作り足したりして、この権大納言のストーリーを組み立てました。絵を描くにあたっては、平安貴族の暮らしをいろいろ調べて、わたしなりに解釈した平安時代らしさがでるようつとめました。
くいしんぼうで、おっちょこちょいの主人公、権大納言は、想像して作った人物ですが、描き進むうちに、だんだん、本当の知り合いのように感じるようになりました。すっとぼけていて、たよりなくって、でもどこか憎めないおじさん、権大納言が、みなさんを楽しませてくれるといいな、と思っています。 (ほりかわりまこ)