冬の終わりに帰りそびれてしまった北風の子。次の冬までハナのうちで待つことになり、女の子と風の風変わりな毎日が始まります。
1972年埼玉生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了。2006年、ニッサン童話と絵本のグランプリ・絵本部門大賞受賞。著書に『まいごのきたかぜ』『ハルとカミナリ』『ポムとナナ はちみつのたね』\"Sumikos Wunsch\"" など。フランス、スペインでも作品が出版されている。
"★刊行時に寄せられたメッセージです
今年も北風の季節がやって来ました。
わが家は風の通り道にあるので、北風がびゅうーびゅうー飛びまわっています。
毎年やってきては、「ひさしぶり、今年も来たよ~」というように小さないたずらで教えてくれます。
私が窓辺で絵を描いていると、コン……コン……コツ……コツ……
「顔あげてよ、こっち見てよ」というように、小さな小枝を窓に何度もぶけてあいさつしてきます。
手がはなせなくて無視していると、へそをまげてバケツを飛ばしたりします。
ある年は、ビニールハウスのビニールをつむじ風でぐるぐると空高く踊らせて、畑のおじさんをびっくりさせていました。
また、ある年はクマの風船が気にいったらしく、窓のすき間から入って来てしばらく一緒に遊んだあと、ドアが開いたすきに空へ連れて行ってしまいました。
どこでもらって来たのか、バスタオルや片方だけの靴下をプレゼント? してくれる年もありました。
いつしか、私はわが家にやってくる北風が大好きになり、ヒュルルンと名前をつけて楽しみに待つようになりました。
北風の強い日には、じっと目をこらして空を見上げてみてください。
あなたの近くにもヒュルルンが遊びに来ているはずです。
ちば みなこ