

夏休みの最初の日、なっちゃんは、いとこのゆうくんのところに遊びにいきました。ゆうくんの家族は、海の家をやっています。
1974年兵庫県神戸市垂水に生まれる。大阪デザイナー専門学校編集デザイン科絵本コース卒業。四日市メリーゴーランド主催の絵本塾で学ぶ。絵本作品に『ナシの絵本』『うどんの絵本』、狂言えほん『しどうほうがく』、紙芝居作品に『へんしんおでん』がある。文章と絵をともに手がけた初めての絵本作品に『うみのいえのなつやすみ』がある。神奈川県在住。
★刊行時に寄せられたメッセージです
夏の海はいつもの海とちょっと違う。いや、かなり違う。
今までなーんにもなかった砂浜に突如、小屋が建ち、のぼりがはためき、色とりどりのパラソルが立ち並ぶ。おまけにその小屋からは食欲をそそるいい匂い。そうです、夏の海には〈うみのいえ〉があるんです。
私は子どもの頃、よく〈うみのいえ〉でお昼ごはんを食べました。子どもの口にはちょっとつらいカレーライスの辛さ。海水で塩辛くなった口の中にひろがるカキ氷の甘さ。冷えた体に染みわたるラーメンやおでんの温かさ。〈うみのいえ〉で食べるごはんは、いつもより何倍もおいしく感じられました。
そんな〈うみのいえ〉をモチーフとした〈海の絵本〉ができました。
この『うみのいえのなつやすみ』を作るきっかけになったのが海をテーマとした私の個展でした。海のそばで育ち、今も海のそばで暮らしている私には海は身近なもの。いくら描いても尽きないモチーフでもあります。
その個展に足を運んで下さった編集の広松さんと「海の絵本を作りたいねえ」と話を始めたのが約半年前。個展で描いた絵を見ながらどういうお話にするか考えました。海へと抜ける路地、波打ち際で見えかくれする貝殻、浜辺でしか咲かない草花、空模様で変化する海の色……。絵本の中に詰め込みたい今まで見てきた海の景色たち。そんなバラバラの景色たちを〈うみのいえ〉が上手にまとめてくれました。私も今まで描いてきた海の絵が、絵本という形になってうれしいです。
今年の夏はぜひ、海へ遊びに行ってみませんか? お昼ごはんはもちろん〈うみのいえ〉で。このおいしさは一流レストランでは体験できません。やっぱり〈うみのいえ〉じゃなきゃ。(青山友美)