

真夜中の机の上で電気スタンドのあかりを土俵に、えんぴつのおすもう大会が始まった。ちょっと懐かしい色合いのゆかいな絵本。
受賞歴:
★刊行時に寄せられたメッセージです
むかし図工の時間に使っていた、黄色い水入れをえんぴつ立てにして、もう何年使っているでしょうか。 ここには、たくさんのえんぴつが入っています。どこかの銀行でもらったえんぴつや、お気に入りだった水玉えんぴつ、お父さんの手帳にはさまっていた細い金具付きえんぴつ等々……、古いものから、いま使っているたくさんのえんぴつたちまで。
その他にも、ペンやマジック、シャープペン、ハサミに定規まで、ほとんどなんでも入っています。
ある日、本当に久しぶりに、中を整理しました。ずいぶんたくさんゴミやホコリがたまっていました。その奥に、小さな小さな、ちびたえんぴつがいたのです。こんなになるまでつかったこと、あったかしら……。誰かが使ったものを、あんまりかわいくてもらったのかもしれません。小さいキズだらけのちびたえんぴつは、その日、そこからようやく救出されました。そして、むかしのお気に入りのえんぴつたちと一緒に、私の机の上に飾られました。
そうして、その夜からこっそりと“えんぴつたちのおすもうたいかい”が始まったのです。何度も何度もけずられて、小さくなった《ちびたやま》は、足腰のしっかりした、強くてやさしいおすもうさんになりました。こうして描いた一枚の絵をもとに、編集の松田素子さんとじっくり時間をかけて、この絵本が出来上がりました。
夜中にこっそりひらかれる“えんぴつたちのおすもうたいかい”を、どうぞ、のぞいてみてください。
(かとうまふみ)