ある日、ぶらりとでかけた靴下のあな。とちゅうで4人のなかまに出会います。「どこへいくの?」「べつにどこへも。ただ、よのなかをみたいとおもってね」「じゃあいっしょにいらっしゃいよ」こうしてどんどんどんどん歩くうちに、あなとなかまは一軒の小屋を見つけます。みんなはそこで休むことにしました。みんなが寝静まったその夜、なにかがのっそり小屋に入ってきて……。
半世紀に渡り、家庭文庫やお話の会で語り継がれてきたチェコのお話が、穴あきの絵本になりました。いままでに穴のあいた絵本は数あれど、その穴自体が主人公の絵本はこれが初!? 穴と仲間たちのユーモラスな冒険が描かれます。よくみると、もうひとつの「赤ずきんちゃん」ともいえるお話が隠されています。赤ずきんちゃんとおばあさんは無事だった! そんなところも楽しい、穴あきのしかけ絵本です。
受賞歴:
この作品は二見正直さんが長く文庫活動をしてきたなかで、とくに人気のあるお話とのことで、絵本化しました。担当編集がはじめてラフを見たのはもう10年ちかく前です。穴あき絵本にするにあたり、どんな穴だったらこのすぐれたお話をより生き生きとさせることができるのか、二見さんとともに試行錯誤。こんな形になりました。元の話はチェコのミラン・マラリークさん。どんな方なのか八方しらべましたが、とうとうわかりませんでした。ひきつづき情報を求めていきます。訳は『もりのなか』の間崎ルリ子先生。ご自身の「鴨の子文庫」をはじめ、日本の文庫活動を長く牽引されてきた方です。『もりのなか』の訳があまりにも有名ですが、今回の作品もリズムのよい訳文で、ユーモアあふれる世界を表現してくださってます。
学校でおはなしを語っています。「あなのはなし」は好きでよく語ります。さあ絵本になるとどうなるのか、興味津々でページをくりました。う〜ん、こういう処理したのですね、あなをあけたとは! 二見正直さんのえ・あなは耳からおはなしを聞く子どもたちにも抵抗なく受け入れられることでしょう。面白いです。(愛読者はがき)