好きなものがたくさんあるってうれしいね。あなたは何がすきかしら? 優しく子どもに語りかけ、幸せな気持ちにしてくれる絵本。
受賞歴:
★刊行時のメッセージです
明るい黄色にピンク、きれいな水色にくすんだ赤。おいしそうなキャンディー・カラーで彩られた絵。動物や登場人物たちのクッキー型のような丸みをおびたやさしいシルエット。アメリカで1950年代に活躍したフランソワーズの絵本は、食べちゃいたいくらいかわいくて、手に取るだけで、幸せな気分に包まれます。1956年に『まりー ちゃんとひつじ』(岩波書店)が日本に翻訳、紹介されてから、ほぼ50年。今なお、読みつがれ、最近はまりーちゃん以外のお話絵本も翻訳されています。アメリカでは最近になって、まりーちゃんシリーズが全巻、復刻されるなど、フランソワーズの再評価が高まっているようです。
フランスに生まれ育ったフランソワーズは、パリで子どもの本の編集の仕事をしたり、何冊が絵本をつくったりしたあと、アメリカに仕事の拠点を移します。そのときのアメリカは、さまざまな作家が活躍し、絵本の刊行点数も多く、後に<アメリカ絵本の黄金期>を呼ばれる時代でありました。その中でつぎつぎと出版される人気作家になってからも、夏はフランスの農場ですごし、まりーちゃんのような田舎暮しを楽しんでいたそうです。素朴でシンプルなお話は、作家の手放したくない大切な暮しを描いたものだったのですね。
この度刊行した『ありがとうのえほん』『わたしのすきなもの』『おおきくなったらなにになる?』は、フランソワーズの描いたたくさんの絵本の中でも、特別なもので、読者である子どもたちに直接語りかけるスタイルが新鮮です。ページをめくりながら、大切なもの、すきなもの、なりたい夢を思い描き、おはなしできたら、なんてたのしいことでしょう。古いものですから、時代の違い、文化の違いを感じさせるページもあります。でも、いろいろと心塞がれるような出来事の多い現代だからこそ、私たちの暮らす世界は、こんなにもあたたかく、すてきなものがいっぱいあるのだ、と子どもたちに伝えたくて、この3冊を紹介しました。どうぞ、一緒に絵本をひらいて、ゆったりとした時間をお過ごしください。