猫のハーニャがすんでいる、山のとちゅうの小さな家の小さな庭。その庭を舞台に、季節のうつりかわりを愛情をこめて描いた絵本。
受賞歴:
★刊行時に寄せられたメッセージです
初めて自分だけの庭を持ったとき(それはごくありふれた住宅街の中にある、四方を家やコンクリートで囲まれた、あまり日当りの良くない小さな庭でしたが)、うれしくて、花の苗や種を夢中で植えました。庭にしゃがみこんでいると、しだいに、たくさんの虫など、小さな生き物の存在に気づくようになりました。そのうち猫が、ネズミや蛇やコウモリやらの小動物を獲ってくるようになり、こんな小さな庭でも、たくさんの命が生活しているのだと知りました。必死で植えた園芸種より、むしろ、雑草と呼ばれる草花のかわいさに惹かれるようにもなりました。
そしてもっとたくさんの動植物を感じる生活をしたくなって、その庭を手ばなす事になりました。そんな時、庭を眺めながらふと、「……ここは最初から私のものでもなんでもなくて、その前もこの後も、誰の物でもないんだ な……」そんなことを思ったのです。
その後移り住んだ場所では、今までとは比較にならない生き物の多さに、私が後から来たよそ者だということを思い知らされ、それが心地よくもありました。よそ者として小さくなりつつも、いつかみんなの輪に加わりたいな。そんな夢を絵本にしたのが『ハーニャの庭で』なんだという気がします。
いろいろなきっかけを私にくれた、あの四角い草地を、今でもときどき思い出すことがあります。(どいかや)