姿を巧みに隠し忍びよる戦争のこわさ、おそろしさを伝える絵本。深みのある文章と、力強い絵で読む人の心に静かに語りかけます。
1944年アメリカ合衆国ジョージア州生まれ。『カラーパープル』で、黒人女性としてはじめてピューリッツァー賞を受賞。同作で全米図書賞も受賞、スピルバーグ監督によって映画化された。著作に、詩集“Once”“Collected Poems”、小説『アリス・ウォーカー短編集』『わが愛しきものの神殿(上下)』『父の輝くほほえみの光で』、エッセー『勇敢な娘たちに』『なぜ戦争はよくないか』など。
1958年イタリア・パドヴァ生まれ。「タイム」「ニューヨーカー」「ニューズウィーク」などの雑誌のイラストや、本の装丁などの仕事多数。世界各国の伝統絵画を研究し、独自の画風をつくりだした。絵本に“When the Wind Stops”“If You Listen”“Sleepy Book”“There Is a Flower at the Tip of My Nose Smelling Me”『ながれ星がはこんできたおはなし』『なぜ戦争はよくないか』など。
戦争が、姿をたくみに隠し、人びとの平和な日々にしのびよる−−そのおそろしさを伝えることが、子どもたちを守るひとつの手だてになると信じています。(アリス・ウォーカー)
この秋、世界で最も影響力のある国の首長が交代しようとしています。
その国アメリカは今世紀に入ってからも、世界のいくつかの地で戦争に関わってきました。今なお終わりが見えないものもあります。戦争は必ず大義によって始められますが、引き起こされる悲惨は大義とは直接関わりのない人々に及んでいます。その多くは女性であり子どもたちです。
「戦争はよくない」ことは自明なことでありながら、大義の前ではいとも簡単に忘れ去られます。その事実をあらためて戦争当事国の国民であり、著名なオピニオンリーダーであるアリス・ウォーカーが、普通の生活、女性・子どもの立場から、静かにしかし強く訴えかけています。
この秋の首長交代は、戦火の地に良い変化をもたらすでしょうか……。確かなことは、現実の政治がどのように変化するにせよ、抽象的な大義を超えて戦争を止めるものは、私たちの「戦争はよくない」という現実の感覚をおいてほかにはないということです。 この本からその思いが伝わることを願っています。
2008年10月
偕成社代表取締役社長 今村正樹
絵のあまりの力強さ、のどかな風景にかぶさる戦争のイメージ(生き物のように描かれていますね)が罪と悲しみと問いかけを表現しています。日本人の感覚ではここまでの絵を絵本にするという企画にはできなかったのではないかと思いました。戦争はいけないとわかっていますが、それでもはじめて、やっと、なぜいけないか、と知れたような本です。(読者の方より)